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2008年01月23日(水) 01時10分

<長崎市長射殺>初公判に遺族悲痛「なぜ殺した」毎日新聞

 伊藤一長・前長崎市長(当時61歳)が選挙期間中に銃撃された事件の初公判を迎えた22日、検察側は冒頭陳述で、城尾哲弥被告(60)が犯行を決意するまでの経緯を明らかにした。しかし、殺人を犯すほどの動機としては、なお不可解さと疑問が残る。真相究明を求め続ける遺族は、閉廷後、納得できない気持ちをぶつけ、城尾被告への怒りをあらわにした。【長澤潤一郎、徳野仁子】

 初公判後、長崎地裁近くの会議室で、前市長の長女の横尾優子さん(37)と夫誠さん(40)が記者会見。田川安浩・元後援会長(72)も同席した。

 法廷で城尾被告を初めて見たという優子さんは「人の命を奪って申し訳ないことをしたという気持ちを持っている顔には見えなかった。検察側の冒頭陳述の間もくつろいでいるように感じた」と反発。起訴事実の認否で城尾被告が謝罪したことについても「心からの謝罪とは受け止めない。紙に書いてあるのを読んでいるだけ」と不満を語った。

 また法廷で、検察側が銃撃で穴のあいた前市長のシャツの写真を証拠として示した場面に触れると、優子さんは「一番つらかった。あの血の付いた……」と声を詰まらせ、涙ぐんだ。

 一方、検察側の冒頭陳述では、城尾被告の動機に関し、金に困窮した原因が前市長にあるとして一方的に恨みを募らせ、見せしめと力を誇示するため殺害を決意したことが示された。優子さんは「人を殺すにしては納得いかない。それだけで人を殺すのか」と語気を強め、「裁判が進む中で明らかになってくれれば」と語った。

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 「事件で私と主人の夢も奪われた」

 法廷では、検察官によって前市長の妻とよ子さん(61)の供述調書も読み上げられた。前市長との幸せだった生活を振り返る場面では、傍聴者からすすり泣きの声も漏れた。

 調書によると、東京出身のとよ子さんは、前市長から「ふるさとを良くしたい。ついて来てほしい」とプロポーズされ、長崎に来た。事件3日前のとよ子さんの誕生日には、前市長がケーキ代わりに長崎名物の「桃カステラ」を買い、一緒にろうそくを立てて祝うなど、「家族をとても大切にしてくれた」と思い出を語った。

 城尾被告については「なぜ(城尾被告が)殺したのか、自分の言葉で語ってほしい。そうでなければ浮かばれない」と訴えた。「人に対してこんなに強い憎しみを抱いたのは初めて。命をもって償ってほしい。どうか極刑にしてください」。検察官の朗読はこう締めくくられ、傍聴席にいた優子さんと誠さんはハンカチで何度も涙をぬぐった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080123-00000008-mai-soci