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2008年01月20日(日) 00時11分

新風舎、未出版の著者1000人から前受け金10億円読売新聞

 民事再生を断念した自費出版大手、新風舎(本社・東京都)は19日、港区の本社で記者会見を開き、契約を交わしながら本が出来ていない未出版の著者は約1000人で、受け取った前受け金は計約10億円に上ることを明らかにした。

 既に出版された本についても、約600万冊(著者約1万5000人)が流通経路に乗らずに在庫のままになっており、「全国の書店で販売される」などの宣伝文句とはかけ離れた実態が浮き彫りになった。

 在庫の約600万冊を、著者1人あたりに換算すると約400冊。会見で同社側は「売れる見通しが全くなくなったので、定価の4割で著者に買い取りを要請している」と明かした。買い取りの期限は今月末に設定しているという。

 未出版の約1000人については、松崎義行社長が「本を作りあげるよう努力したい」と述べ、事業譲渡先を探していく考えを示した。

 松崎社長は「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と陳謝し、近く自己破産を申請する意向を示す一方、「自費出版は人類にとって絶対に必要なこと」「表現者が夢を持ち続けられるよう支援してほしい」などと述べた。

 新風舎に対しては昨年7月、出版契約を結んだ3人らが契約が履行されなかったとして損害賠償訴訟を起こしており、原告の一人のアルバイト男性(31)は「未出版の1000人分の書籍を完成させたいというが、できるか疑わしい。著作権だけは返してほしい」と憤っていた。

 自費出版を巡っては近年、トラブルが多発。退職者の「第二の人生」に関する情報を提供しているNPO法人「リタイアメント情報センター」(東京都港区)には、昨年1年間、自費出版の被害相談が約200件寄せられた。「全国で売れる」などと持ちかけられたのに一部の書店にしか置かれていないという、契約不履行の訴えが多いという。

 こうした状況を受け、中小の自費出版社でつくる「日本自費出版ネットワーク」が作成したトラブル防止のためのガイドライン案には、著者に対し、〈1〉収益は得にくいことを説明する〈2〉費用を明確に示す——などが盛り込まれた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080119i212.htm