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2008年01月20日(日) 11時50分

コンビニ各社「ご当地味」の陣 九州地方、地元客にPR朝日新聞

 長崎のトルコライスや宮崎のチキン南蛮……。九州・山口・沖縄のコンビニエンスストアで「ご当地商品」が増えている。深夜営業のスーパーや弁当店が新たなライバルになるなどコンビニ業界の競争は激しくなるばかり。慣れ親しんだ味で、地元の客を引き寄せられるかどうかが、コンビニ各社の勝負の決め手になりそうだ。

コンビニ各社の「ご当地商品」

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 ローソンは九州・沖縄の約千店で22日から2月1日まで、地元でなじみの食品を集めた「九州フェア」を開く。熊本名物の春雨スープ「タイピーエン」や大分の「とり天弁当」など48品が並ぶ。うち明太子(めんたいこ)味のスナック菓子など12品は全国約8400店でも売り出す。

 目玉は福岡市の外食チェーン、リンガーハットと共同開発したチャンポンと皿うどん。ローソンの開発担当者は「店で出すスープと同じ材料で作った」と胸を張る。九州商品部の川本孝広マネジャーは「普段食べ慣れているものをそろえて高齢者にもコンビニに来てもらうのが狙い」と話す。

 コンビニ各社の「ご当地商品」が増え始めたのは3年ほど前から。食品の安全性への関心が高まり、地元でとれた産物を地元で食べる「地産地消」が見直されたことも後押しした。

 最大手のセブン—イレブン・ジャパンも「ご当地商品」に力を入れる。北九州市発祥とされる焼きうどんや山口県岩国市の「岩国ずし」などを九州や山口限定で扱う。

 ファミリーマートは昨夏、宮崎県の協力で「そのまんま宮崎フェア」を全国で開催。東国原英夫知事の人気もあってチキン南蛮やマンゴーを使ったキャラメルなど67品の売り上げは計20億円を超えて目標を大きく上回った。「宮崎の魅力を全国に発信するお手伝いができた」と同社。

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 おでんや幕の内弁当など全国の店に並ぶ「定番」商品も、地域によって味を変えている。ファミリーマートは九州や東北など全国7地区ごとに開発チームをつくる。チームの中心は各地域の出身者で、「ふるさとの味」を作り出す。

 いなりずしやおでんは地区ごとに使うしょうゆやだしを変える。九州なら甘めにするなど7地区すべての味付けが違う。セブン—イレブンの幕の内弁当は九州ではサバの塩焼きが入っているが、東京ではサケになる。

 値段も地域の事情によって違う。ローソンの場合、九州の店では牛肉より安い鶏肉を使うなどして弁当の平均価格を全国より約1割安くした。同社は「九州は東京や大阪などの大都市と比べて物価が安い。地元で競合する弁当店の価格に合わせた」という。

■市場飽和「弁当で勝負」

 九州経済産業局によると、九州・沖縄のコンビニは3435店(06年度末時点)。調査を始めた98年度から8年で約1.6倍になった。だが、既存店の売上高は99年度から8年連続で減っているうえに、新店を含めた全店舗の売上高も06年度に初めて減少に転じた。

 同局は「コンビニは店の数が多すぎるオーバーストアの状態」とみる。スーパーや弁当店、ドラッグストアとの競合もあり、経営不振で店をたたむ例も増えている。

 コンビニは弁当や総菜、パンが売り上げの約3割を占める。ローソンは「弁当の売れ行きが店の業績を決める。地元向けの味で、お客さんを引きつけたい」という。

 そんな大手に対抗して、九州に224店ある地場コンビニのエブリワン(熊本市)は店内でパンを焼くなど違いを出そうとしている。

 昨年12月には鹿本農業高(熊本県山鹿市)の生徒が開発した県産米粉のピザを販売。地元密着の姿勢を強める。同社は「大手には資本力ではかなわないが、消費者に近い地場コンビニの強みを生かしたい」と話す。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/life/update/0120/SEB200801200004.html