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2008年01月18日(金) 16時30分

【2008年大阪府知事選】学力低下問題(下)産経新聞

 ■全国45番目 対策に課題

 「きわめて厳しい結果。想定していた以上だ。もう一度原点に戻り、これまでの取り組みを分析し直さなければ…」

 小6、中3を対象に43年ぶりに実施された昨年の「全国学力テスト」。国の結果公表を受け、大阪府の綛山(かせやま)哲男教育長は険しい表情で語った。

 府内の平均正答率は、小学校、中学校いずれも全国45番目。全国平均との差が最も大きかったのは中学国語Bのマイナス7ポイントで、トップの秋田県など3県と比べると12ポイントもの差が開いた。

 北海道(小学校46番目、中学校44番目)、沖縄県(いずれも47番目)も低かったが、大阪以外の大都市圏である東京都(7番目、30番目)や愛知県(22番目、9番目)は、大阪府よりいずれも高かった。

 「大阪では、地域ごとの学力の差が非常に大きい。豊中市など府北部では高いが、南部では低いというのが受験業界での一般的な見方。大阪市内でも、地域によって学力格差が歴然としているといわれる」

 府内の塾経営者の一人はそう解説する。全国学力テストの結果について、府教委は、市町村、地域ごとのデータは公表しない方針だが、この塾経営者は「地域別に成績を出せば、差がはっきり出るはずだ」という。

 だが、府内の学力全体が平均して低いかというと、そうではない。公立高の40代の男性教諭は「大学を受験する層に限れば、大阪の子供の学力は決して低くはない」と断言する。

 大手予備校が集計した昨年の大学入試センター試験のデータによると、府内の受験生の平均点は、東京、神奈川、奈良に次ぎ全国4番目だった。

 男性教諭は「難関大学に多数の合格者を出す高校がある一方、2けたの足し算すらできない生徒が集まる学校もある。全体の底上げをしないことには、大阪の学力低迷は解消されない」と主張する。

 この学力問題について府知事選の有力3候補は、それぞれ全く異なった見方をしている。

 梅田章二氏(57)は「格差と貧困」が原因と位置づけ、「生活基盤をきっちりさせる補助制度の創設」を主張。対する橋下徹氏(38)は「全く悲観していない」と対照的で、「英数国理社だけで競争するのは非常に狭い考え方。大学受験だけでなく、いろんな進路を選べるようにしたい」という。一方、熊谷貞俊氏(63)は学力向上に力を入れることを公約し、「教師の質を上げ、基礎学力を鍛える理念を持たせる」。

 3候補の主張について、府内を中心に約120カ所の学習塾を展開する「第一ゼミナール」企画情報室の池田幸生課長は「それぞれもっともな考えだと思う」としながらも、「すべての先生が学力の基盤となるものを的確に教えているかは疑問。教員に授業方法を研修することも、取り入れたほうがいいのではないか」と指摘する。

 一方、中学、高校教員を37年間務め、現場教員の相談に応じる「教師駆け込み寺・大阪」を主宰する下橋邦彦さん(68)は教員が日常の雑務に追われていることを問題視し、「先生たちが子供に向き合うことが難しくなっている。教員の増員が急務」と提言する。「国がやるべきことだが、府が独自に非常勤講師を雇ってもいい。休み返上で授業の準備をしている先生は大勢いる。今の教育は、そんな先生たちの“善意”に頼っているのだから」

 (この連載は張英壽、山田英嗣、西川正孝、松本学が担当しました)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080118-00000102-san-soci