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2008年01月18日(金) 13時11分

WSJ-メリルリンチ10−12月期、シティグループと同額の赤字ダウ・ジョーンズ

ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米メリルリンチ(NYSE:MER)が17日発表した2007年10−12月期決算は、米シティグループ(NYSE:C)と同額の大幅赤字となった。信用収縮の打撃を受けた市場での影響を一掃するために総額167億ドルの評価損を計上したことなどが要因。

純損益は98億3000万ドルの赤字(前年同期は23億ドルの黒字)、1株利益は12.01ドルの赤字(同2.41ドルの黒字)。純収入(総収入から利払い分などを差し引いたもの)は、評価損計上などのため、マイナス81億9000万ドルとなった。

トムソン・ファーストコールがまとめたアナリスト予想平均は、1株損失が4.93ドル、総収入が3億9900万ドル、評価損計上額は最大150億ドルだった。

同社株の17日終値は、前日比5.64ドル(10.24%)安の49.45ドル。その後の時間外取引では上げに転じ、49.80ドルで取引されている。

ジョン・セイン氏が昨年11月に最高経営責任者(CEO)に就任する前はリスク選好が行き過ぎリスク管理が不十分だったと、今では多くの人が考えている。同氏は、こうした過ちに対処するために迅速に行動した。過去2カ月で、国内外の投資家から最大128億ドルの資本注入を受けることを決めた。

含み損の一掃は高くついた。07年下半期に計上した評価損は250億ドルと、02年から06年までの利益の総額を超えた。アナリストは「メリルはおそらくサブプライムローン(信用度の低い借り手への住宅融資)関連の問題の大半を解決した」と考え、同社の資産運用部門への信頼感を取り戻した。だが、混乱している資本市場によるメリルへの悪影響は続くとみており、商業用不動産など新たに懸念すべき分野があると指摘した。

ゴールドマン・サックスのアナリスト、ウィリアム・タノナ氏はこの日発表した調査リポートで「メリルが、痛みを伴いながらも資本増強と評価損計上の両方を積極的に進めたことは喜ばしい。とはいえ、4年分の資産増を1四半期だけで消し去ってしまったことには失望させられた」と述べた。

メリルが10−12月期に計上した評価損のうち、99億ドルは債務担保証券(CDO)関連、16億ドルは資本市場部門のサブプライムローン関連のエクスポージャーによるもの、31億ドルは不安定な債券保証会社関連のエクスポージャーによるもの。メリルが7−9月期に計上した評価損は84億ドルだった。

セイン氏は記者団に「当社全体の目標は、07年を過去のものとすることだ」と語った。

メリルの10−12月期は、好業績を上げていた前年同期とは対照的に激動の四半期となった。7−9月期に多額の損失を出し四半期決算としては6年ぶりの赤字になったことから、スタンレー・オニール氏がCEO辞任に追い込まれた。

セイン氏がCEOに就任後、メリルはバランスシートの改善に取り組み、商業金融部門を売却したほか、シンガポール、韓国、クウェートのソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、外貨準備などを運用する政府系ファンド)などから資本注入を受けた。さらに17日には、セイン氏のゴールドマン・サックス時代の同僚、ノエル・ドノホー氏をリスク管理の共同責任者として迎えた。

メリルは、評価損の発生源となった債券・為替・商品トレーディング部門の事業環境が11月から12月にかけて悪化したと説明した。

投資銀行部門の純収入は、好調だった前年同期に比べ11%減少した。株式トレーディングの純収入は23%増加したものの、債券関連の損失で帳消しになった。

メリルが最大手である個人向け証券仲介部門や50%近くを出資している資産運用会社ブラックロック(NYSE:BLK)を含む世界の資産運用部門は、税引き前利益が30%増の9億1400万ドルとなり、収入は12%増加した。

メリルはトレーディング部門のCDO・サブプライムローン関連のエクスポージャーを、7−9月期末時点の215億ドルから昨年末までに75億ドルに縮小した。これにより、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)やドイツ銀行のアナリストのマイク・メイヨー氏は「メリルは最悪期を脱した」との見方を示した。

S&Pは「メリルが今も抱えているこの種のエクスポージャーは比較的少ないため、今後さらに多額の住宅ローン関連の評価損を計上する可能性はほとんどなくなったと考えている」として、メリルの格付けを維持した。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスはこれに比べると慎重な見方をしており、状況が悪化している商業用不動産ローン担保証券(CMBS)市場へのメリルのエクスポージャーについて懸念を示した。

メリルは、商業用不動産へのエクスポージャーが180億ドルであると明らかにした。セイン氏はこの水準に満足しているという。この市場は、住宅市場のような混乱はみられないものの、鈍化の兆しは一部に表れている。空室率が下げ止まっているほか、一部の投資家が昨年、融資限度近くまで借り入れた資金で不動産を積極的に取得している。

セイン氏は、リスクを抑え成長するためのさらなる方策として、一部の取引資産を新設のファンドに移そうとしている。メリルは太平洋岸地域に不動産ファンドを新設する資金を調達しており、インフラ関連などの未公開株投資ファンドの設立も目指している。

同社のヘッジの一部は機能しなかった。メリルは17日、経営難に陥っているACAキャピタル・ホールディングスなど債券保証会社との契約でヘッジしきれない場合に備え31億ドルを引き当てていたが不十分だとした。メリルは、ACAへのエクスポージャー19億ドルの全額に加え、トリプルA格の債券保証会社へのエクスポージャーの約16%を評価損として計上した。その結果、このエクスポージャーは35億ドルとなった。

S&Pとムーディーズは、債券保証会社の損失が拡大していることから、トリプルAの格付けを見直す可能性を示唆した。このため業界大手2社の株価は急落し、MBIA(NYSE:MBI)の終値は前日比4.18ドル(31.19%)安の9.22ドル、アンバック・ファイナンシャル・グループ(NYSE:ABK)は同6.73ドル(51.89%)安の6.24ドルとなった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080118-00000018-dwj-biz