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2008年01月16日(水) 19時04分

ネット中傷 中高生中心に警察への相談急増 4年で3倍朝日新聞

 インターネット上のひぼう中傷に耐えられないとして、警察に相談する深刻な事例が急増している。警察庁のまとめでは06年は約8千件超で4年前の3倍以上で、その後も増加傾向が続く。被害は中高生が多く、露骨な性的表現も少なくない。一方で、プロバイダーの協力を得られないなどの理由で、警察の摘発は増えない。専門家からは「迅速にトラブルを解決する新たな仕組みが必要だ」との指摘が挙がる。

インターネット上の名誉棄損や中傷に関する相談件数の推移

 警察庁のまとめでは、ネット上での名誉棄損や中傷をめぐる被害相談の件数は年々急増。02年は2566件だったが、06年は8037件にのぼり、07年1〜6月は前年同期比573件増の4202件だった。

 特徴は、被害相談に中学・高校の女子生徒が目立ち、書き込んだ「加害者」もその知人が多いとみられることだ。恋愛のもつれやいじめがエスカレートしたとみられ、顔やスカートの中の写真を並べて掲載したり、集団で悪口を書き込んだりする悪質な事例もある。「ネットの手軽さから罪の意識が希薄で、内容も過激になりがちだ」(警察庁担当者)

 一方、ネット上の書き込みに関連し、警察が名誉棄損容疑で摘発したのは02〜06年で毎年数十件で、07年1〜6月も42件。このうち10件が中高生ら未成年者によるものだった。

 なかなか摘発までいかないのは、「個人的なことには関与しない」と捜査に非協力的なサイト管理者もいることや、知り合いの被害者が今後の学校生活を考慮して処罰に後ろ向きなためという。

 ネット上での悪質な書き込みなどについては、プロバイダー責任制限法に基づき、発信者についての情報の開示を要請できる。また、プロバイダーなどの団体が作る指針で、被害者らの申し立てで法務省が削除要請できる。同省によると、06年の申し立ては282件。

 元検事で、ネット大手ヤフーでの勤務経験がある落合洋司弁護士は「ネットの利用者は低年齢化しており、この種の相談や事件が増えるのは必然と言える。捜査機関の態勢拡充に加え、削除要請をする人とプロバイダーやサイト運営者との紛争を扱う裁判外紛争処理(ADR)機関を立ち上げ、簡易で迅速に紛争を解決する方法を整備する必要があるのではないか」と話す。

 ■主な事例から

 07年1〜6月に全国の警察が名誉棄損容疑で未成年者を摘発した主な事例は次の通り。

 〈事例1〉公式サイトとは別に、特定の学校の情報をやりとりするネット上の掲示板「学校裏サイト」に、塾の友人の実名を挙げ、「しね」「バリ・ブス」「あいつの顔を見たらはきそうになる」などと書き込んだとして、大阪府警は昨年1月、女子中学生(当時13)を児童相談所に通告した。

 〈事例2〉女子大生2人が知人の女子大生の顔写真や名前、メールアドレスをネットの掲示板に乗せ、「セフレ(セックスフレンド)を大募集」などと書き込んだとして、徳島県警が昨年5月に書類送検した。異性関係のトラブルが原因だった。

 〈事例3〉中学3年の女子中学生(当時15)が同級生を名指しし、「性病だ」などとネット掲示板に書き込んだとして、茨城県警が昨年1月に摘発した。

 〈事例4〉男子高校生(16)が中学時代の同級生2人の実名を挙げ、「今後もエッチする約束をした」などとネット掲示板に書き込んだとして、大阪府警が昨年1月に摘発した。

 〈事例5〉女子中学生が、同級生の携帯電話のメールアドレスを載せて「させてやるけん、メールして」と投稿したとして摘発された。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0116/TKY200801160191.html