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2008年01月15日(火) 06時02分

年金保険料、75歳女性無駄払い 社保庁、返還を拒否朝日新聞

 国民年金に任意加入し、年金を満額受け取る条件を満たそうとした女性(75)が、条件をクリアした後も、銀行口座から保険料を引き落とされていた例が明らかになった。払いすぎを認識できた社会保険庁、加入者への説明を社保庁から指導されていた自治体とも、連絡していなかった。女性側は「過払いの原因は行政側のミス」と返還を求めているが、社保庁は「行政訴訟を起こしてもらうしかない」としている。

 女性は東京都品川区の宮田紅(べに)さん。32年生まれの宮田さんの場合、国民年金を満額受給するには、保険料を31年分支払う必要があったが、それに達していなかったため、60歳を超えてからも任意で加入。62歳で条件を満たしていた。

 しかし、社保庁や区役所から連絡はなく、任意加入もできなくなる65歳の直前まで、受給額に反映されないのに31カ月分計約37万円の保険料が引き落とされた。

 昨年6月、税理士の夫裕さん(76)が自分と紅さんの記録を地元の社会保険事務所で調べた際、紅さんの記録に「保険料の過払いがある」と指摘された。夫妻は昨年暮れ、過払い分の返還を社保庁に求めたが、拒否されたという。 こうした過払いは他にもあるとみられ、社保庁は05年4月から、納付保険料が上限に達した場合、保険料の納付を受け付けない制度に改めている。

 社会保険労務士の森萩忠義さんは「厚生年金と国民年金の保険料が二重払いになった場合、国民年金保険料を還付する制度はすでにある。今回の問題も、年金額に反映されない保険料は返すという考え方で還付すべきだ」と話している。

 〈キーワード〉国民年金の任意加入 41年4月2日以降に生まれた人の場合、国民年金は原則として、20歳から60歳になるまで加入し、65歳からの年金受給には「25年以上の加入」が、年金満額を受け取るには「40年分の支払い」が必要になる。条件を満たしていない人は60歳から65歳になるまで任意加入して保険料を納付できる。

 41年4月1日以前に生まれた人は、生まれが早いほど保険料納付期間の上限は短く、宮田紅さんは31年分になる。

 年金受給に必要な加入期間は、25年より短いケースがある。60歳以上の任意加入者は06年度で約27万人。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0115/TKY200801140220.html