記事登録
2008年01月15日(火) 00時00分

(中)地域事務所読売新聞

 面積は奥多摩町に次いで都内2番目の広さ、しかも多摩最多の54万人の人口を抱える。当然、八王子市には効率的な行政サービスが求められる。現在、市内には住民票交付や国民年金の変更受け付けなどを行える地域事務所が14か所ある。これを6か所に統廃合する案が市民の関心を集めている。

市民に行政サービスを提供する八王子駅前事務所。同事務所は八王子駅南口再開発で完成するビル内への移転が決まっている

 一つの報告書がある。市の課長級職員らで組織する「地域サービスあり方検討会」が2005年9月にまとめたものだ。全体として行財政改革の必要性を色濃くにじませたもので、この中で、市内を6地域に分け、従来の事務所の機能を拡充した「地域総合事務所」を1か所ずつ設置することを提言した。

 建物は従来の事務所を活用するとしているが、新事務所に転用されない事務所は原則廃止だ。

 報告書には新事務所をどこに配置するかの案も示され、同市南大沢、下柚木などからなる「東部地域」は、現在の南大沢事務所とされている。

 これに反発したのは、報告書通りなら廃止される由木事務所と由木東事務所を利用している住民ら。昨年9月、「由木・由木東事務所の存続を求める会」を結成し、12月には約1200人分の署名簿を市に提出した。

 会代表の大田努さん(66)は1996年に世田谷区から移り住んできた。自宅から徒歩5分の位置に由木事務所があることもここを選んだ理由だったという。

 「何かあった場合に備え、身近な事務所の有無は大きな問題。電話ではたらい回しにされるだけ。相談ごとで事務所を訪れることはある」

 事務所廃止後の行政サービス水準維持のため、証明書の自動交付機を市内17か所の市民センターに設置することなども報告書では提案されている。だが、同市越野の松原婦美さん(85)は「駅の自動券売機でも、もたもたしているとすぐに後ろに列ができてしまう。機械は不便」と不満顔だ。

 報告書は市の最終決定ではない。市は06年7月に、学識経験者や市民団体の代表、公募市民などによる「地域サービスのあり方検討委員会」を発足させ、さらに検討を進めた。

 委員会が昨年12月にまとめた提言は、「6地域に各1か所、地域総合事務所を設置する」と、基本的には報告書の内容を踏襲したものだった。しかし、設置場所については「住民の意見を踏まえた議論・検討が必要」だとし、廃止される事務所についても「地域ニーズを踏まえた施設へと転用する」と、慎重な対応を求めた。

 市は今後、各地域の住民の意見も聞きながら、庁内で検討し、結論を出すことになる。今回の市長選での当選者が、最終的にその決断をすることになる。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyotama/feature/hachioji1200233722195_02/news/20080114-OYT8T00547.htm