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2008年01月15日(火) 16時15分

【2008大阪府知事選】法人事業税配分見直し(上)産経新聞

 ■55億円 府財政に新たな負担

 「泣く子と地頭と『政府』には勝てない」

 昨年12月11日、東京都の石原慎太郎知事は福田康夫首相との会談後、理屈では勝てないときに使うことわざで政府を批判した。

 都に企業などが支払う法人事業税のうち約3000億円を、財政力の弱い自治体に分配することに渋々合意したのだ。

 政府・与党は、大都市圏と地方の間で税収に大きな格差があることから、2日後、平成20年度の与党税制改正大綱で法人2税(法人事業税・法人住民税)のうち、法人事業税の配分見直しを正式に決めた。都道府県の法人事業税の一部を「地方法人特別税」という国税として召し上げ、人口比などをもとに全国に配分するという内容だ。

 法人2税は大都市圏の都道府県にとって税収の大黒柱。大阪府の場合も、平成19年度の税収1兆4600億円のうち5900億円と、3分の1以上を占める。しかも法人事業税の割合は大きく、4800億円で住民税のほぼ5倍。政府は、ここに目をつけたのだ。

 大阪府も約220億円を国に差し出さねばならない。ただ、国から地方交付税措置を受けている府の場合、交付税で4分の3が補(ほ)填(てん)されるため、実際には55億円の減収にとどまる計算。それでも府財政課の担当者は「決して小さな数字ではない」と嘆く。

 大阪府の台所はいまや火の車だ。府の年間予算は約3兆円だが、自由になる金は「1%ほどしかない」(府財政課)。

 サラリーマンの平均年収440万円の家庭にたとえると、収入のほとんどが借金返済や食費、光熱費など必要経費で占められ、1年で自由に使える金が4万4000円しかない状態で、ここから8000円を捻出(ねんしゆつ)するようなものだ。

 19年度予算では、子育てや産業支援、災害対策、いじめ対策など知事が力を入れる「再生重点枠」約500億円が計上され、税収など一般財源から約60億円が充てられている。ほぼ同額の55億円がなくなれば、事業縮小は避けられない。府は「国に交付税の上積みを訴える以外にすべはない」という。

 こうした危機的な状況に、府知事選に立候補した有力3候補はそれぞれ独自の財政再建策を打ち出している。

 梅田章二氏(57)は「『関空2期工事』など大規模事業への投資を中止し、資本金10億円以上の大企業の法人事業税を引き上げる」。橋下徹氏(38)は「府出資法人の民営化や府有地の売却」、熊谷貞俊氏(63)は「出資法人見直しや、水道事業など府と大阪市の二重行政解消」をあげている。

 ただ、府庁内からは、こうした改革が効果を上げるか、疑問の声が聞こえる。

 出資法人は46。食品流通や公園管理などの業務があり、府職員の一人は「法人をなくしても、業務は残り、今度は府がやるだけのこと。まず事業を見直さなければ」と指摘。公共事業については「道路整備や高架化など生活にかかわるものが多く、むだではない」と否定的で、「どの事業をどう減らせるのか。実際は府庁に入ってみないと分からない」と冷ややかにみている。

                   ◇

 27日の投開票に向け、激しい舌戦が続く大阪府知事選。府政が抱える課題を検証する。

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