記事登録
2008年01月15日(火) 13時50分

大人の『ファミコンバー』 子供に戻って懐かしのゲーム 20、30代の『共通言語』東京新聞

 東京・新宿の繁華街でひそかに“ファミコンバー”が広がっている。店内を飾るのは、懐かしい家庭用テレビゲーム機。二十、三十代を中心とする会社員らが、コントローラーを手にゲーム話に熱中する。大人になったファミコン世代の“放課後”は、新宿で続く。 (中山洋子)

 「好きなものを並べるとこうなった」

 ファミコンなど六種類の家庭用ゲーム機が並ぶ「エイトビットカフェ」(新宿区新宿三)の店内で、代表の福田尚久さん(33)は苦笑した。二〇〇五年十二月に開店した店内では、漫画やCDなど一九八〇年代の雑貨に囲まれ、二十、三十代の会社員らが子どもに戻ってゲームに熱中する。

 共同代表の小城雅美さん(33)は「ファミコンは、息の長いゲーム機で二十代でもやっている。二、三十代の“共通言語”で、客同士でもすぐに会話できる道具として置きました」と話す。

 任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売したのは八三年七月。「ファミコン」の略称は家庭用ゲーム機の代名詞にもなったが、〇三年に製造中止となり、昨年十月には修理受け付けも終了した。後継機のスーパーファミコンと合わせて全世界で一億一千万台を売り上げたゲーム機だけに、今も人気は衰えない。

 〇六年七月にオープンした「16SHOTS」(新宿二)は、ファミコンだけではなく携帯可能なDSなど最新ゲーム機もそろえた本格的な“ゲームバー”。男性店長(33)は「ダーツバーやスポーツバーのように、ゲームの話ができる場所があってもいいと思った」と力を込める。

 「三十代がちょうど子どものころに花開いたメディア(情報媒体)がゲーム。親に『ファミコンはやるな』と怒られながら苦労して遊んだ思い出を共有する。もっと上の世代なら漫画やテレビ、もっと下の世代なら携帯電話でしょうけど」と分析する。

 現在、新宿には八〇年代のオブジェとしてゲームを置く店も含めて“ファミコンバー”が六、七店にも増殖している。「新宿に行けばゲームファンがいる」という状況が生まれ、海外からわざわざ訪ねてくるファンもいるという。

 “高橋名人”と子どもたちから呼ばれたゲームソフトメーカー「ハドソン」宣伝部の高橋利幸さん(48)は「子どものころにファミコンにインパクトを受けた世代が行きたい場所」と話す。

 ちなみに高橋さんは、かつて子どもたちの熱狂を抑えるため「ゲームは一日一時間」と呼びかけた。新宿の夜によみがえったファミコン熱には「大人は基礎体力も自制心もあるので、私が言わなくても大丈夫でしょう」と笑った。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008011590135040.html