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2008年01月14日(月) 00時00分

(上)再開発読売新聞

JR八王子駅南口に広がる再開発事業用地

 八王子市の表玄関、JR八王子駅。その南口前であす15日、再開発事業の着工式が行われる。事業の調査開始から27年、ようやく「市の長年の夢」が実現することになったが、その経済波及効果を疑問視する声もある。

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 事業のスタートは1981年。当初は百貨店などが入る商業中心の再開発ビルが想定されていた。しかし経済の悪化などで核となるテナントは現れず、2度の都市計画変更を経てようやく着工にこぎ着けた。

 地権者らがつくる「八王子駅南口地区市街地再開発組合」が約1万平方メートルの敷地に地上41階地下2階のビルを建設、駅前広場なども設ける。2010年秋完成の予定で、総事業費約358億円(うち市の負担は約132億円)。ビルには390戸の住宅や小規模な商業施設が整備される。さらに、62年開館で老朽化が進む市民会館(同市上野町)が、約2000席の市民ホールとしてビル内に移転される。

 近年、伊勢丹、大丸、西武、丸井などの大型店が次々に撤退し、09年には東京地・家裁八王子支部、地検八王子支部なども立川市に移転する。中心市街地の「地盤沈下」には歯止めがかからない八王子。

 JR東日本八王子支社によると、同駅の1日平均乗車人員は、1998年度の約8万2700人から06年度の約8万1400人へとほぼ横ばい。一方、周辺の再開発が進むJR立川駅は、この期間に約12万1200人から約15万3000人へと増加しており、駅の求心力でも差が開いている。

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 「八王子市全体の活性化に寄与する」と位置付けられているこの再開発。しかし、八王子商工会議所商業部会の大野皖司部会長は「市民ホールと住宅では、集客力が限られてしまう」と指摘する。

 昨年9月に市が実施したアンケートで、中心市街地について「不満足な点」を質問したところ、「魅力的な店が少ない」(27・5%)が最多、「大型商業店舗が不十分」(13・6%)がそれに次ぎ、治安や福祉施設などへの不満を大きく上回った。大型商業施設を伴わない今回の再開発で、その不満が解消されるのか。

 再開発事業用地に隣接して、約7600平方メートルの土地が広がる。所有者のJR貨物は再開発に並行して約4200平方メートルに立体駐車場を建設する。残りのスペースでの商業施設建設も取りざたされるが、まだ「検討中」(同社広報室)で、再開発の大きな不確定要素となっている。

 地元不動産業者は「南口周辺は交通基盤整備が遅れており、渋滞が起きるのでは」と懸念する。飲食店を経営する男性は「新しいビルが建っても、ビル風が吹くだけかも」とつれない。「北口のバスターミナル充実など、駅周辺全体への流入が増える施策を講じてほしい」と大野部会長は望む。

 ようやく実現する再開発事業が本当の活性化に結びつくかどうか。新市長の手腕が問われている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyotama/feature/hachioji1200233722195_02/news/20080113-OYT8T00546.htm