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2008年01月13日(日) 01時39分

1月13日付 編集手帳読売新聞

 体を構成する細胞の核の部分にあるDNAの鑑定が、犯人や身元不明遺体の特定に威力を発揮している。血液や皮膚、毛髪、唾液(だえき)が採取できれば、個人識別ができるからだ◆警察庁の刑事局長を務めた岡田薫さんによると、米国の非営利組織の調べで、DNA鑑定で先月までに、全米で200人以上の服役囚の無実が判明したという。15人の死刑囚も含まれていた◆DNA鑑定や後で真犯人がわかったケースなども含め、この35年間に死刑囚124人の無実が明らかになったとする米国の別の機関の報告もあるそうだ。冤罪(えんざい)を防ぐために、DNA鑑定などの科学捜査がいかに重要かがわかるデータだ◆被告人が容疑を否認している事件は、米国では市民から選ばれた陪審員の全員一致で有罪か無罪の評決をする。先の数字は米国での誤審の多さを示すものでもあるが、それでも米国民は現状の司法制度で良しとしているのだろう◆日本では来年から、殺人事件などの有罪や無罪の判断、量刑の決定に国民から選ばれた裁判員も参加する裁判員制度が始まる。例えば殺人事件で1審無罪判決が出るのは毎年0・5%前後だ。こうした数字に変化が出るのか興味深い◆制度の狙いの一つに裁判の迅速化があるが、無実の人が罪に問われたり真犯人が罪を逃れたりする事例が増えるようでは困る。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080112ig15.htm