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2008年01月13日(日) 19時17分

迷走する消費者行政 新庁、担当相構想・・・実効性は「?」産経新聞

 相次ぐ食品表示偽装や耐震偽装事件を受け、福田康夫首相が意欲を示している消費者行政の一元化が迷走し始めている。自民党内で「消費者庁」構想が浮上すれば、政府も「消費者担当相」の新設を検討中だ。いずれも実現すれば、首相が就任直後から力こぶを入れる消費者・生活者優先の政治の具体化となる。だが、省庁の関係組織の一本化による実効性に疑問符がつくほか、行政改革に逆行する焼け太り批判もつきまとい、「福田カラー」の体現は一筋縄にはいかないようだ。(酒井充)

 ■生活者重視だが…

 与党内で「何をしたいか見えてこない内閣」とも揶揄(やゆ)される中、首相の消費者問題への「やる気」は突出している。首相は昨年10月の就任直後の所信表明演説や今月4日の年頭記者会見などで、「生活者・消費者が主役となる社会へと転換していく」と繰り返し訴えてきた。

 9日には記者団に「行政が複雑で分かりにくいなら、正していかなくてはいけない。特に消費者の接点になる役所の一元化が考えられてもいい」と述べ、消費者関係組織の集約による消費者庁創設の検討に前向きな考えを示した。

 とはいえ、実現への道は平坦(へいたん)ではない。たとえば食品行政に関する法律を所管する省庁・機関をとっても、厚生労働(食品衛生法)、農林水産(日本農林規格法)、経済産業(不正競争防止法)の3省および公正取引委員会(不当景品類及び不当表示防止法)と複雑に入り交じる。

 また、泉信也国家公安委員長が食品安全担当相を兼務し、それぞれの役所が違う根拠法で対応しているのが実態だ。

 しかも消費者行政の窓口は現在、内閣府国民生活局が担っている。内閣府は調整官庁の性格が強く、国民生活担当相は内閣設置法などに基づくポストではない。国民生活担当相には各省庁へ対応を勧告できる権限が明記されているものの、「今まで一度も適用されたことがなく、各省庁の幹部でさえ権限の存在を知らなかった」(政府高官)という状況にある。

 ■課題山積の消費者庁

 一方、自民党は昨年11月、首相の意をくんで消費者問題調査会(野田聖子会長)を立ち上げた。その中で浮上したのが、日本弁護士連合会などが新設を求めていた「消費者庁」構想だ。

 想定される役割は消費者関連の事業への許認可や監督権限、被害者救済の施策などで、独立行政法人「国民生活センター」を取り込むことによる相談業務の充実や紛争解決機能の強化なども有力視される。

 ただ、町村信孝官房長官が7日の会見で「組織を全部一括すれば全部解決するかというと、そうもいかない」と慎重な姿勢をみせたように、消費者庁構想の実現には課題が山積する。消費者問題の間口は広く、膨大な業務が予想される消費者庁の新設は、行政のスリム化を目指す政府方針に反するとの懸念のほか、既得権限に固執する省庁の激しい抵抗も必至だ。

 このため政府は当面、消費者庁設置を見送り、新たに「消費者担当相」を常設する検討に入ったが、国民生活担当相と実態が変わらなければ「単に消費者行政を目玉に据えたい首相のポーズに過ぎなくなる」(自民党中堅)との指摘もある。

 実際、最近の担当相は中堅・若手議員による初入閣組の“指定席”と化し、「霞が関や与党にしっかりモノがいえる重量級を据えなければ内閣府の担当相は機能しない」(官邸筋)といわれる。消費者担当相設置の場合は、人事面での配慮も必要となりそうで、福田カラーの演出は、首相の本気度がどこまであるかにかかっている。

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