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2008年01月12日(土) 13時50分

“笑い”封印 祈りの群読 阪神大震災の悲劇 若手団員が伝える東京新聞

 六千四百人余の命を奪った阪神大震災から十三年となる十七日、東京都台東区の浅草木馬亭で劇団「お笑い浅草21世紀」の若手メンバーが中心となって、大震災をテーマにした群読「いいつたえ くちつたえ」を公演する。題して「アサクサ21 スペシャルメモリアルプロジェクト」。いつもの“笑い”を封印し、震災の悲劇を伝え、亡くなった人々の冥福を祈る。 (丹治早智子)

 「一九九五年一月十七日、午前五時四十六分。救出されなかった人は哀(かな)しい。救出された人の『乗り越える時間』は、なをかなしい−」

 そんな語り出しで始まる複数の人間による朗読劇・群読は、震災で家屋が全壊し、重傷を負った詩人車木蓉子さんのルポルタージュ「五十年目の戦場・神戸」を基に、大阪在住の演出家大谷潔さんが企画、劇団太陽族代表の岩崎正裕さんが、構成・台本を手掛けた。

 震災の翌年秋、兵庫県の演劇学校生によって初めて上演されたが、被災地周辺以外で上演されることは少なく、都内では初公演という。

 今回の公演を企画したのは「浅草21世紀」の座員おののこみちさんと、若手役者の谷田法太さん(34)。震災当時、こみちさんは三重県で、大学生だった谷田さんは大阪で激しい揺れを体感。地震の恐怖を感じた。

 七年前に活動の拠点を関西から東京に移したこみちさんは、上京の際、親交のあった大谷さんから「いつかは君の手で東京の人にこの作品を紹介してほしい」と、群読の台本を託された。

 「大震災の記憶が忘れ去られてしまいそうになる前に、約束を果たしたい」。思い切って「浅草21世紀」の橋達也座長に相談すると、橋座長は「被災者の気持ちになり、本気で取り組むなら」と、被災から十三年となるこの日の舞台を、群読のために提供してくれた。

 さらに橋座長をはじめ劇団仲間が裏方や語り部役を買って出た。

 こみちさんは「お笑いの人間が、被災者の悲しみを語っていいのか、心の中で葛藤(かっとう)がありました。実現できる以上は、心を込めて伝えたい」と話す。

 公演は午後六時半から。入場料千円。問い合わせは、浅草21世紀=電03(3844)2130=へ。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008011290135012.html