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2008年01月12日(土) 15時02分

<オウム被害者>「求償権含めて」自民救済案の再考要請毎日新聞

 オウム真理教による被害者への賠償が滞っている問題で、自民党のプロジェクトチーム(PT、早川忠孝座長)がまとめた救済案に対し、被害者側から再考を求める声が上がっている。被害者側は、教団の活動を抑え込むために、国が教団から債権を回収する「求償権」を明確に盛り込むよう求めている。

 教団が「アーレフ」と「ひかりの輪」に分裂し、これ以上の債権回収が困難になったことから教団の破産手続きは3月に終結し、被害者への配当率は37〜38%(約14億円)にとどまる見通し。このため被害者側は国に対し、残る約25億円の賠償金を立て替え払いしたうえで、教団から債権を回収するよう求めていた。

 これを受けて自民PTがまとめた救済案は地下鉄サリン事件などを「テロ犯罪」と位置付け、国が被害者や遺族に見舞金を支払う内容だが、給付総額は数億円にとどまる。「アーレフ」や「ひかりの輪」に対する国の求償権も明確には記されず「回収に努めるべきだ」という努力目標とした。実際に、国が債権を回収する作業は容易ではないことなどが背景にあるとみられる。

 これに対し「オウム真理教犯罪被害者支援機構」や「地下鉄サリン事件被害者の会」など5団体は9日「破産手続きが終わるとオウムは経済的に野放し状態になる。国が債権を引き取り、求償すれば活発な活動を防げる」と自民党の議員などに要望。破産管財人の阿部三郎弁護士も、国による求償権の行使が難しい場合は、支援機構に事務を委託する方法を提案した。

 また自民PT内では、救済対象を松本・地下鉄両サリン事件に限る案が有力になっており、支援機構側は坂本弁護士一家殺害事件などを含めたすべてのオウム事件の被害者を対象とするよう求めている。

 支援機構の宇都宮健児理事長は「国による救済は評価できるが、求償権がなければオウムが楽になる。債権を回収し続ける意味は大きい」と訴えている。【銭場裕司】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080112-00000048-mai-soci