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2008年01月11日(金) 19時43分

「知らないうちに神世界が利用」 バイオリニスト語る朝日新聞

 霊感商法事件で神奈川県警が強制捜査に入った有限会社「神世界」の集会や関連会社のコンサートに、ある人気音楽グループの女性バイオリニストが出演し、勧誘の広告塔に利用されていた。女性は神世界関連のヒーリングサロンの元常連客。事件を受け、すでにグループメンバーとしての活動は休止している。朝日新聞の取材に「知らないうちに巻き込まれた。軽率だったと反省しています」と話した。

 女性は、首都圏に住む20代の新進アーティスト。個人で演奏活動をするかたわら、数年前からクラシックファンなどにも人気の音楽グループの一員として、テレビ出演や公演を重ねていた。

 神世界の集会やコンサートにも繰り返し出演していた。06年3月、東京ディズニーランド近くのホテルで開かれた「大祭」では、数千人を前に独奏を披露。東京都心の高層マンションにある神世界関連のサロンで催された数十人規模のミニコンサートにも5、6回出演した。関係者によると、主催者側は「人気グループのメンバーが演奏」とPRし、主婦らを誘っていたという。

 神世界とのかかわりについて、女性は「出演した集会やコンサートが、神世界の関連とは知らなかった。事件の報道で名前を知り、インターネットで調べて初めて関連に気づいた」と話す。

 2年前に手首を痛め、知人から都内のヒーリングサロンを紹介された。「手のひらをかざしてもらうと腫れが引いた。体の不調もなくなった」。にせ薬を本物と信じ込む「プラシーボ効果」を疑ったが、「実際に良くなったのだから」と母とともに通い続けたという。

 やがてサロンのスタッフから、集会やミニコンサートへの出演を頼まれるようになった。「恩返しのつもり。ギャラはもらっていません」。演奏の合間には自分の体験を語ったと明かす。

 神世界をめぐっては、「ヒーリング」を受けた客に数十万円の書画などを買わせる霊感商法を行っているとして、詐欺の疑いが持たれている。神世界被害対策弁護団によると「被害者は数千人、被害額は100億円程度にのぼる」という。

 女性もペットボトル入りの水などにこれまで数万円を投じたという。だが、「自分は被害者だと思ってないから、かまわない」。集会やサロンでの演奏が新たな被害につながったのでは、と尋ねると、「結果としてそうなったら、申し訳ないと思います」と話した。

 音楽グループをマネジメントする芸能事務所は昨年末、「諸般の事情にかんがみて」との理由で彼女をメンバーから外した。復帰は未定という。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0111/TKY200801110257.html