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2008年01月10日(木) 14時08分

回収業者全員有罪に 世田谷の古紙持ち去り 一審判断覆す東京新聞

 東京都世田谷区のごみ集積所から古新聞などを持ち去り、区清掃・リサイクル条例違反の罪に問われた足立区の古紙回収業者(54)の控訴審判決で、東京高裁(須田賢裁判長)は十日、一審の無罪判決を破棄し、罰金二十万円を言い渡した。世田谷区の条例をめぐって起訴された業者は十二人。一審段階では無罪七人、有罪五人と判断が分かれ、上級審での判断に注目が集まったが、高裁では、全員が罰金二十万−十五万円の有罪になった。

 これまでの一審東京簡裁の判決によると、足立区と横浜、川崎両市の業者十二人は、世田谷区から持ち去り禁止の命令を受けていたのに、二〇〇四年七月−〇五年二月、区内のごみ集積所から古紙を持ち去った。

 主な争点は、持ち去り場所が、条例が禁じている「ごみ集積所」に当たるかどうか−だった。

 一審で業者側は「条例は集積所の規定が明らかではなく、適正な刑事手続きを定めた憲法三一条に違反する。犯罪の構成要件としてあいまい」と主張。これに対し、五つの有罪判決は「看板などから通常の人は集積所と判断できるので構成要件として明確」と判断。七つの無罪判決は「条例は集積所の規定があいまい。憲法三一条に違反する」などとした。

 無罪判決の中には「罰則を設けてまで、随意契約した委託業者に回収業務を限定するのは、独占禁止法違反の疑いもある」と踏み込んだ指摘もあった。

 これに対し、高裁段階では「集積所の地図や看板が設置され、仮に看板がなかったとしても古紙がまとめて置かれた外観などから通常の判断能力を持った一般人なら集積所と判断できる」などと判断し「常識」を問いかけた。

 その上で「古紙回収業自体を制限するものではなく、禁止命令に違反した場合に初めて処罰対象となる。恒常的、安定的に資源再利用の仕組みをつくるという区民の意思に応えるため、持ち去りを規制することは必要」などと述べ、業者側の主張を退けた。

 <世田谷区清掃・リサイクル条例> 1999年に制定され、2000年4月から施行。03年12月の改正で、区長が指定する業者以外の持ち去りを禁じる規定が盛り込まれた。全国にも同様の条例はあるが、同区の場合、実効性を高めるために、条例としては珍しく罰則規定を設けたのが特徴。区長の中止命令を受けても持ち去り行為をした違反者には最高20万円の罰金が科せられる。起訴された12人は中止命令を受けていた。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008011090134928.html