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2008年01月08日(火) 17時40分

古紙持ち去り、逆転「有罪」次々 7人の無罪一転朝日新聞

 東京都世田谷区で、ゴミ集積所の古紙を区側が集める前に無断で持ち去ったとして区の清掃・リサイクル条例違反の罪に問われた回収業者らに対し、東京高裁が「有罪」とする判断を相次いで出している。もともと東京簡裁が「条例はどこで何をすると罰せられるのかを明確に規定していないので刑事罰には問えない」との理由で業者の一部を無罪としたことから注目された裁判。次々と覆ったのは、なぜなのか。

 区の告訴に基づいて起訴された業者は計12人。一審の簡裁では7人が無罪となった。ところが、高裁で昨年11〜12月に出た七つの二審判決には一つも無罪としたものがなく、11人が有罪(罰金20万〜15万円)に。残り1人の判決は今月10日に予定されているが、別の被告を有罪とした裁判長が担当しており、有罪となる可能性が高い。

 有罪と無罪の判断が分かれた大きな理由は、持ち去りを禁じた場所が条例で明確に規定されているかどうかのとらえ方の違いがある。

 集積所には看板や表示のないところがあり、区によると約5万1000カ所のうち、明示されているのは約3万カ所にとどまる。人通りの多い商店街や狭い路地では1軒ごとに家の前に置いてもらっている場所もある。区はこうした場所についても集積所にあたると説明している。

 しかし、業者からみれば、集積所と分かる表示もなく「道端にぽつぽつと古新聞が置いてある」ようにも見えるのも事実だ。簡裁が一部で無罪を選択したのは、こうした事情を踏まえたためだった。

 高裁で判決を担った裁判長は5人。いずれも「規定はあいまいではない」との結論を出した。

 そのうち、池田修裁判長(現東京地裁所長)は「確かに条例は場所を具体的に特定していない」と認めたうえで、「現実にも古紙がまとめて置かれている状況によって、外観上も集積所であることが通例明らかになっている」として、有罪の判断を導いた。

 中川武隆裁判長は「区民は最終的に区の所有にゆだねる意思で集積所に置くと理解でき、横取りは所有権の侵害だ」とした。

 ただ、持ち去りはいまだになくならず、区が持ち去りを繰り返す業者に出す「禁止命令書」は、昨年度だけでのべ100件を数えた。有罪となった業者は全員が最高裁に上告したが、担当者は「裁判の行方にかかわらず、悪質な業者へは引き続き適切に対処する」としている。

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 〈世田谷区清掃・リサイクル条例〉世田谷区は03年の条例改正で、区内の数十業者でつくる組合の加盟業者以外が古紙を無断で持ち去ることを禁止した。罰則は20万円以下の罰金。禁止の対象となる場所は区の定める集積所だけで、個々のマンションや住宅、自治会などから直接回収することは禁じていない。山口県下関市や千葉県松戸市など中核市を中心に同様の罰則規定を持つ条例の施行が広がっている。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0108/TKY200801080222.html