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2008年01月07日(月) 23時27分

肝炎救済法案、週内にも成立 15日にも基本合意朝日新聞

 与野党は7日、薬害C型肝炎被害者の「全員一律救済」をめざす「薬害C型肝炎感染被害者救済特措法案」について、8日の衆院本会議で全会一致で可決することで合意した。週内にも参院本会議で可決、成立する見通しだ。全国10裁判所で200人が係争中の薬害肝炎訴訟は全面解決に向かうが、感染者からの輸血や注射器の使い回しといった医療行為などによる350万人前後(推定)の肝炎患者、感染者は救済の対象外になっており、このまま幕引きになりかねないことへの不安の声も上がっている。

 与党は7日午後、救済特措法案を衆院に提出した。その後、衆院厚生労働委員会の理事懇談会で扱いを協議。8日昼に同委、午後に衆院本会議でそれぞれ可決し、参院に送ることで合意した。これを受け、参院側でも週内に成立させる方向で与野党が調整に入った。

 法案をめぐり、民主党内には救済の対象外となる患者らが多数残ることへの懸念も根強い。このため、国会の場で患者らの意見を聴き、付帯決議などの形でさらに救済をめざす考えを明示すべきだと要求していた。これに対して与党側が7日、患者らの参考人質疑を受け入れ、全会一致で成立する運びが固まった。採決の段階で、対象外となった患者らにも救済範囲を広げるよう国に求める付帯決議を行う方向だ。

 法案は、特定のフィブリノゲン製剤と血液凝固第9因子製剤による感染者を救済対象とする。「肝硬変・肝がん・死亡」から「未発症」まで被害者の症状に応じ、4000万〜1200万円の給付金が支払われる。

 費用は国が設ける200億円規模の基金でまかない、製薬会社にも基金への負担を求める。原告団が求めていた国の責任と謝罪については、前文で「政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである」と盛り込んだ。

 福田首相は7日、首相官邸で記者団に「国会に提出でき、うれしく思う。一日も早くこの法案が成立し、みなさんに安心してもらいたい」と語った。

 薬害C型肝炎訴訟原告団の山口美智子代表(51)は同日、東京都内で記者会見し「被害が生じ、感染を防止しえなかった責任に触れるなど、私たちの意見が全面的に採り入れられた。全面解決への土台が固まった」と評価。原告弁護団は、具体的な和解条件を決める「基本合意書」を15日にも政府との間で結びたいとの考えを示した。

 ただ、1万人以上と推定される血液製剤による感染者のうち、カルテや投薬証明書などが残っている人は千人程度にとどまるとみられ、多くの感染者は投与の事実や感染原因について、裁判所の判断を得ないと給付対象にならない。

 また、血液製剤による感染者のうち、血友病など先天性疾患の治療のため投与された患者については「治療としては有効だった」として、救済の対象から外された。

 さらに、輸血や注射の針の使い回しなどで感染したB型も含めると、肝炎患者・感染者は350万人前後と推定される。政府は特定の肝炎治療を受ける患者の治療費の一部公費助成を08年度に設けるが、薬害としての認定は困難だとしており、与党がまとめた救済法案の対象者からは外れた。

 血友病の患者会など23団体は7日、「一律救済の目的と離反し、法の下の平等にもとる」とする意見書を衆参両院議長に提出した。 アサヒ・コムトップへ

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