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2008年01月05日(土) 08時01分

エビ養殖 会長を逮捕 旅券法違反 詐欺容疑立件も視野産経新聞

 エビ養殖投資をめぐり詐欺容疑で家宅捜索を受けた投資会社「ワールドオーシャンファーム」(東京)会長の黒岩勇容疑者(58)=住所不定=が、他人名義の偽造パスポートを使用したとして、旅券法違反などの疑いで警視庁生活経済課に逮捕されていたことが4日、分かった。他人に成りすましてパスポートを申請したのは昨年春で、事業の破綻(はたん)を見越して計画的に海外逃亡したとみられる。

 同社は「フィリピンでのエビ養殖に投資すれば1年で倍になる」と宣伝し、約4万人から約600億円を集めたとされ、同課は詐欺容疑での立件も視野に事情を聴く。

 調べでは、黒岩容疑者は昨年5月26日と12月1日、関西空港から他人名義のパスポートを使用してフィリピンに出国した疑い。

 12月20日に帰国し、翌21日に東京都中央区の銀行の現金自動預払機(ATM)で現金を引き出そうとした際、銀行から通報を受けた捜査員に逮捕された。黒岩容疑者は「金を下ろすために戻ってきた」などと話している。

 同社は昨年1月、「7月に一括で支払う」と配当を停止。5月28日付で「台風が養殖場を直撃した」として支払い延期を通知し、黒岩容疑者は5月26日に出国している。

 使用したパスポートは黒岩容疑者と同年代の日本人名義で、名義人は黒岩容疑者に近い関係者とみられている。黒岩容疑者は戸籍謄本を譲り受けたうえで、昨春、自分の顔写真を使って申請しており、事業の破綻を見越してパスポートを入手した疑いが強い。

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 ■資金に窮した「カリスマ」

 数々のマルチ事件に手を染め、「カリスマ詐欺師」の異名を取った黒岩勇容疑者。逮捕された際は「カリスマらしく身なりは整っていた」(捜査幹部)ものの、銀行口座の凍結が進み、逃走資金に窮していたとの見方が強い。

 ワールドオーシャンファームをめぐっては昨年2月、米国に送金された約48億円(4000万ドル)の口座が米連邦捜査局(FBI)によって凍結されたほか、警視庁も複数あった口座の凍結を進めている。

 黒岩容疑者が現金を引き出そうとした口座にも、警視庁が存在を把握し、凍結手続きを進めている最中だった。「凍結が進んで、残った数少ない口座から金を下ろすため帰国した」(捜査幹部)とみられる。

 黒岩容疑者は昨年12月20日にベトナムから福岡空港(福岡)に入国。ワ社の関係者と国内で接触した形跡はなく、単独で行動していたとみられている。

 ワ社は昨年5月、所有株を売却して2億円の現金を取得するなど、破綻前に現金を集める動きを加速。昨年7月以降の家宅捜索では、事業に深く関与していた長男の関係先から数億円の現金が見つかっている。

 調べに対し黒岩容疑者は、他人名義のパスポートを使用したことは認めているが、「詐欺やそれ以外の話題は、のらりくらりとかわしている」(捜査幹部)という。警視庁は東南アジアでの滞在先のほか、資産の全容についても黒岩容疑者を追及する方針だ。

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