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2007年12月30日(日) 00時57分

ステッカーで犯罪半減 「パトロール中」車や漁船に千枚朝日新聞

 住民のちょっとした協力で、犯罪が2年続けて半減した町がある。北海道の南端、松前半島にある松前町と福島町だ。自家用車や漁船に「パトロール中」と書かれたステッカーを張るだけで即席の「パトカー」に早変わり。地元署はパトカーを7台しか持っていなかったが、これで一気に1100台となり、犯罪抑制につながった。

バスは住民の大事な交通機関。前面に「パトロール中」のステッカーが張られている=北海道松前町で

 海岸線沿いの国道を走る乗用車が陽光をキラリと反射した。縦20センチ、横35センチ。「パトロール中」とくっきり書かれた黄色い蛍光ステッカーだ。乗用車、商用車、バス、トラック……。津軽海峡に浮かぶイカ釣り漁船にも、同じマグネット式のステッカーが張られている。

 スタートは04年11月。空き巣が目立ったため、牛乳配達車に張ったのが始まりだった。2町を所管する松前署などが働きかけ、合わせて人口1万6000人の地域にみるみる広がり、参加する車は800台、船は300隻に。合同して「オラが街・守り隊」も発足した。

 効果はてきめんだった。04年に112件だった刑法犯は、05年には45%減の62件。06年はさらに効果を生み、前年度比47%減の33件にまで減った。今年も11月末で29件にとどまっている。

 「オラが街・守り隊」の隊長を務める前田一男・松前町長は「不届きなやからの抑止力になるのはもちろんだが、参加することで、みんなが『自分たちで安全を守っている』という意識を持つようになった」と力説する。住民の通報も増え、窃盗犯やアワビの密漁犯の逮捕につながったという。

 06年11月には、寄付金をもとにステッカーを小型にしたキーホルダーを9500個作製し、お年寄りや小、中、高校生の全員に配った。発案者の西村トセさん(81)は「車も船もない私でも、何かの形で参加したかった」と話す。死傷者が出た交通事故も05年の27件から06年には17件に減った。

 警察庁も注目し、ホームページや様々な会合で紹介している。全国防犯協会連合会は「警察の手が回らなくなる中、歓迎したい取り組みだ。無理なく継続することが大事です」と話す。 アサヒ・コムトップへ

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