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2007年12月30日(日) 15時07分

右翼などの情報紙 自治体、購読要求に一斉拒否作戦朝日新聞

 自治体職員らがトラブルを恐れてやむなく購読している情報紙や機関紙の発行元に対し、弁護士と連携して自治体側が購読拒否を突きつける動きが広がっている。7年前の福井市の成功例が次第に広がり、今年も岡山、石川、山梨県で計25自治体が一斉拒否に踏み切った。首長や職員に不当な利益を要求する「行政対象暴力」は増加傾向にあり、暴力団や右翼団体関係者などが出す情報紙の購読要求が最も多い。日本弁護士連合会も「事なかれ主義」脱却の動きをバックアップしている。

 「貴社発行の新聞・雑誌・書籍などの購読・広告掲載・協賛は、すべて取りやめさせていただきます」。11月20日、岡山市職員連名の内容証明郵便が、代理人の弁護士を通して県内外の情報紙、書籍の販売元計7団体に一斉に発送された。

 発行者が役所に来てしつこく購読を求めたり、一方的に送りつけて料金を請求したりするケースが後を絶たず、市が今春、幹部職員277人にアンケートを実施した。

 その結果、57人が不必要な情報紙などに年2000円〜1万円のポケットマネーを払っていることが判明。購入していたのは地元政界の情報や役所の話題を載せた定期発行の情報紙、1冊4万3000円の国防関係の書籍などで、購読の理由は「トラブルが心配だから」「前任者からの引き継ぎで」などだった。購読をやめようとした際に「脅迫じみた言葉をかけられた」「机をけられた」などの体験もあった。

 市は地元弁護士会に対応を相談。職員に参加を呼びかけ、1人500円ずつを出し合って弁護士と委任契約を結び、購読の拒否に踏み切った。発行者側の反応は「発送済みの購読料は支払うのか」と問いただす電話1件だけ。職員が「弁護士に一任している」と答えるとすぐに引き下がったという。

 情報紙の購読を始めて20年以上になる50代の幹部職員は主任に昇格した際、人事異動の記事が載った情報紙を送りつけられ、発行元の従業員が料金を請求しに職場へ来た。「上司に相談したが、『役がついたら、こういうのが来るんだ』と言われ、おかしいと思いながらも年2000円を払ってきた」。課長昇格後は、別の2団体の情報紙も購読するようになったという。

 岡山市が手本にしたのは、福井市の「成功体験」だ。00年当時、福井市では約350人の幹部職員がほぼ全員、情報紙や右翼団体の機関紙などを私費で購読し、支払総額は年間約2000万円にのぼっていた。相談を受けた弁護士らが委任状を集め、発行元の59団体へ拒否を通知し、購読打ち切りに成功した。この事例が日弁連主催の行政対象暴力研修会などで紹介され、知られるようになった。

 これまで少なくとも福井、山梨、宮崎、高知、三重、石川、岡山で県や150以上の市町村が購読拒否に踏み切った。

 石川では県と全19市町が今年夏、県内の機関紙発行元4団体に対し、一斉に購読拒否通知を弁護士名で送付した。県警が自治体への不当要求の実態を調べたところ、約4割の自治体が不当要求をされた経験があり、弁護士会などとつくる県民事介入暴力等対策研究会を中心に自治体へ呼びかけて実現した。県人事課は「職員が個別に拒否すると、個人が攻撃される恐れがあるが、警察や弁護士らプロとスクラムを組めば心強い」と話している。 アサヒ・コムトップへ

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