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2007年12月30日(日) 02時31分

<防衛汚職>旧防衛庁、毒ガス弾処理で協会に便宜 OB紹介毎日新聞

 福岡県苅田(かんだ)町の海底で発見された毒ガス弾の処理方法を決めるための調査業務を巡り、旧防衛庁が入札前の03年初め、社団法人「日米平和・文化交流協会」の受注に便宜を図っていたことが、関係者の証言で分かった。協会の秋山直紀専務理事(58)に対し、同庁側が受注に不可欠な調査の専門家を紹介するなどしたため、協会が落札に成功したとされる。発注者側が特定の業者の受注を促す不可解な構図が浮上した。

 毒ガス弾は00年11月に見つかり、防衛庁は03年1月、無害化処理に関する調査業務の一般競争入札に参加する業者を公募。調査方法や報告書の内容を評価・審査するため、専門家による「評価委員会」を設置することが参加条件だった。

 同庁が秋山氏に紹介した専門家は化学兵器に精通する同庁OB。証言によると、OBは入札前の03年初め、秋山氏から電話で「防衛庁から(あなたを)推薦してもらった。評価委員になってほしい」と依頼された。OBが拒むと、今度は同庁の担当者から電話があり「早期に処理したいので協力してくれないか」と頼まれた。このためOBは委員就任を承諾したという。

 03年2月24日の入札には協会と東京都渋谷区の印刷会社が参加。1回目の入札額がともに予定価格(上限価格)を上回ったため2回目に移行した。ここで印刷会社が辞退し、協会が単独で応札した2〜3回目もこれを上回り、4回目の約865万円でやっと下回ったため協会が落札した。協会はその後、OBら4人で評価委員会を組織。委員会の指導を受けながら調査を行い、翌月31日に調査報告書を完成させた。

 防衛省事態対処課は「入札前に協会側から評価委員会の予定メンバーは聞いていたが、推薦については把握していない」としている。印刷会社の広報担当者は「取材に応じられない」と話した。

 調査報告書提出から約8カ月後の03年11月には実際の処理業務の入札があり、大手メーカーが20億6000万円で落札。防衛専門商社「山田洋行」は無害化処理装置の部品の納入やダイバー手配を下請け受注した。同社元専務、宮崎元伸容疑者(69)=贈賄容疑で再逮捕=は東京地検特捜部の調べに対し「秋山氏に受注を依頼し、見返りに1億円を送った」と供述していることが判明している。

 【ことば】苅田港の毒ガス弾

 終戦直後に旧陸軍が苅田港沖に約4000発を投棄したとされる。昨年度までに1254発が処理され、今年度は約700発を処理する計画。潜水士が磁気探知棒で毒ガス弾を見つけ、密閉容器に入れて引き揚げ、現地の処理施設で爆破して無害化する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071230-00000010-mai-soci