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2007年12月30日(日) 10時42分

警視は悩みの聞き役 役割分け「奇跡」演出 神世界事件朝日新聞

 神奈川県警の前警備課長吉田澄雄警視が関与した疑いのある有限会社「神世界(しんせかい)」グループの霊感商法事件で、吉田警視は、詐欺容疑で家宅捜索を受けるきっかけとなった被害男性(44)から悩みを聞き出し、「ヒーリング(癒やし)」を掲げ青山サロンを運営する杉本明枝社長(44)に内容を伝えていたことが29日、分かった。杉本社長はその後、悩みを言い当てることで「奇跡」を信じさせ、数十万円を払わせていた。県警では、系列のサロンでも同様に聞き出し役や相談役など役割分担して、客にサロンの効果を信じさせていたのではないかとみて調べている。

 関係者によると、吉田警視と男性は04年5月、東京・千駄ケ谷のサロンであった神世界系の祭典で知り合った。その際、吉田警視は「神奈川県警公安2課長代理」の名刺を渡した。男性は吉田警視を信用し、様々な相談を持ち掛けた。

 04年10月、青山サロンの杉本社長から男性に電話があり、男性は「よくないんです。どうしてでしょうか」と尋ねた。杉本社長は、男性の近況や悩みを知っていたかのようにほのめかした上で、「最近、行いが悪い。神様が怒っているので、出来る限りのお玉串をあげ、おわびしなさい」と助言したという。

 男性は、吉田警視と杉本社長が知人関係だとは知らず、吉田警視だけにしか話したことのない悩みを社長が知っていたため、「ぞっとして」奇跡だと信じ込み、すぐに青山サロンを訪れた。千手観音の描かれた額の前で頭を下げ、少なくとも30万円を支払ったという。

 吉田警視は、この男性以外にも名刺を渡すなどして、サロンを信用させる役割をしていたとされる。

 県警は、被害者らから事情を聴き、サロン側が演出する奇跡の話などの実態とともに、サロンに通わせて金を使わせる手口の解明を進める。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/1229/TKY200712290222.html