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2007年12月29日(土) 21時45分

<オウム真理教>破産手続き、来年3月終結へ 管財人に聞く毎日新聞

 オウム真理教の破産手続きが来年3月に終結する見通しになった。96年3月の手続き開始から12年。被害者への配当率は約35%にとどまり、与野党で新たな救済策が検討されている。「被害回復はまだ道半ば」と語る破産管財人の阿部三郎・元日本弁護士連合会会長(81)に、破産手続きの現状や国への要望などを聞いた。【銭場裕司】

 −−破産手続きを終結させる理由は。

 ◆通常の破産事件なら約35%(約13億円)は高配当だが、生命・身体の被害としての賠償ならたとえ100%でも被った痛手は癒えない。管財業務としては不満足そのもので、被害者救済はまだ道半ばだ。だが、オウムは分派して回収がこれ以上厳しい。

 −−管財人を引き受けた当時を振り返ると。

 ◆スタッフや家族が無事で終えられるかが最大の心配で、命にかかわる事案だと考えた。事務所前にトラック1台分の砂利がまかれたこともある。抵抗が強かったサティアンなどの明け渡しでは「脱会して社会復帰するなら協力する」と働きかけるなどして約7カ月で実現した。強制執行をせず、けが人もなかった。強行策を取らなかったのは正しかった。

 −−管財業務は異例の長さになった。

 ◆本来なら配当すれば終わり。当初は3〜5年と思ったが、高配当を目指してあらゆる手を尽くした。管財業務が続いたことで、定期的に教団に経済活動の報告を求める監視役になり、教団の「目の上のたんこぶ」として無軌道な行動を控えさせた面もあった。

 −−印象深い出来事は。

 ◆一つは被害者への配当を高めるために、教団に対する国の債権放棄を実現できたこと。通常なら不可能だが「小さなパイを国と被害者で分けるのは社会正義にあうのか」と訴えて特別法を制定してもらった。大きな負担になってしまう施設解体費も、国会議員や省庁と直接掛け合い、国と自治体から約5億円拠出してもらうことができた。

 −−被害者の声が支えになったと聞く。

 ◆後遺症を負う方の話をうかがうと、家族をあげて大変な介護をしている。一刻も早くなんとかしたいと思っていた。テロは国家権力に対する挑戦でもある。苦労が続く罪のない被害者を国は全面的に救ってほしい。管財業務が終わるこの機会に、国が被害者補償を果たした上で、教団から債権を回収してほしい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071229-00000063-mai-soci