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2007年12月27日(木) 12時05分

ゲーム機「買い屋」横行 外国人使い、発売日に海外へ朝日新聞

 行列に並んで人気商品を買い集め、国外に流す——。そんな「買い屋」と呼ばれるビジネスがある。人気のあるゲーム機やゲームソフトなどの場合、品薄だったり、正規販売されていなかったりする国では、販売価格の数倍で取引されている例も。人気ソフトが世界に先駆けて発売された今月1日、一団の動きを追った。

ゲームソフト「Wii Fit」を購入し、車へ運ぶ若者たち=1日午前9時40分、東京・新宿で

購入したゲームソフトの箱を車に積み込む人たち=1日午前、東京・新宿で(画像を一部加工しています)

次々とゲームソフトの箱が運び込まれ、1時間ほどで荷台がいっぱいになった=1日午前、東京・新宿で(画像を一部加工しています)

倉庫のような場所に運び込まれた大量のゲームソフト。そのまま段ボール箱に詰められた=1日、東京都台東区で

 ゲームソフトは任天堂の「Wii Fit(ウィー・フィット)」。日本だけで発売された。

 東京都新宿区の家電量販店前には、午前6時から人が並び、約70人の行列ができた。外国語を話す若者、ゲームとは縁遠そうな中高年の男性が目立つ。

 開店は午前9時半。客は一列になって順に店内へ。それぞれ商品の箱を提げて出て来る。

 多くが店近くに並んだ3台のワゴン車に向かう。4、5人のグループで、箱を次々と荷台に載せていく。

 女性が、男性らに現金とポイントカードを渡し、再び店に向かわせる。やりとりは中国語のようだ。午前11時、100個以上の商品を積み、ワゴン車は走り出した。

 向かった先は、東京都台東区のビル。倉庫のようなスペースで、商品を段ボール箱に詰めていた。半開きのシャッターから、数人が忙しく動くのが見える。

 午後2時、倉庫前に運送会社のトラック2台が止まり、段ボール箱を積みこんだ。トラックは成田空港に直行した。

 買い屋の一つのグループを取り仕切る男性によると、商品は香港経由で中国本土に送られ、現地で使えるように電源部分を改造するという。

 この日の夜、中国のネットオークションで、早くもFitが売りに出された。日本で8800円の商品に、1500元(約2万4000円)の値が付いた。任天堂によると、中国ではFitはおろか、本体のゲーム機「Wii」さえ正規に販売していない。

 グループの元締の男性によると、Fitは約100人を使って新宿、秋葉原、池袋の3カ所で、2日で約2000個買い集めた。1個あたりの利益は約1000円。買い屋に1個あたり約500円を渡し、元締らは約100万円を手にしたという。

 Wiiが発売された06年には約2万台を「輸出」。年間利益はほかも含め約6000万円に上ったという。扱う商品はゲーム機やカメラ、パソコン、エコバッグなど多様だ。

 買い屋は今、都内で10グループ、5000人ほどが活動しているという。

 行列に並ぶのは、路上生活者や、外国人が多い。69歳の男性はFitを2日間買い続けて2万円を手にした。「妻を亡くし、経営していた会社も倒産。日銭が入ればありがたい」と話す。

 一方、量販店側。新宿駅近くの店は1日でFit500個を完売し、別の店でも1500個が売れたという。「転売業者お断り」と張り紙をしている店もある。

 任天堂の広報担当者は「台湾などでWiiが出回っているのは把握している」としつつ、「Fitは大きく、輸送費がかさむ。高く売らないともうからず、商売にならないのでは」と話した。

   ◇

 〈日本貿易振興機構(ジェトロ)の話〉 北京の繁華街の電器店で、中国では売られていないはずのゲーム機を確認している。密輸の可能性がある。需要があれば買い屋のような業態は生まれるだろう。マフィアの資金源になる恐れもある。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/1227/TKY200712270136.html