2007年12月25日(火) 08時00分
年金余波ここにも 施設売却で詐欺師暗躍(産経新聞)
■全国の優良物件「仲介料出せば随意契約結べる…」
公的年金や健康保険の保険料で建設された年金福祉施設の売却に絡み、不審者が購入希望者に「随意契約を結べる」などとうその話を持ちかけ、仲介料などをだまし取ろうとする詐欺未遂事件が全国で続発していることが分かった。年金行政が巨費を投じた「負の遺産」は買い手側にとって人気物件となっており、詐欺グループが付け込んでいるとみられる。売却を進める独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」(千葉市)は注意を呼びかけているが、「もとをただせば国の垂れ流しが原因」との厳しい声も出ている。
社会保険庁によると、全国328カ所の年金福祉施設には、建設費や維持費として計約1兆4000億円がつぎ込まれた。同機構が302施設を売却することになったが、政府から移管された時点の不動産価格は約2016億円と大きく目減りした。
機構は今年12月中旬までに127施設を民間などに売却。一般競争入札を原則としており、移管時と比べて売却額は1.35倍に高まったが「無駄遣い」と批判された年金行政の汚名返上にはほど遠い状況だ。
売却される物件は、買い手側にとって総じて「手ごろな優良物件」といえる。17、18年度の入札倍率は約2〜4倍と購入希望者は少なくなく、こうした実態が不審者暗躍の素地となっている。
機構によると、昨年9月6日から今年11月末までに、大阪や千葉など各地の施設売却をめぐって25件もの偽情報が確認された。最も目立つのは購入希望者らに「随意契約できる」「優先的に買い取りができる」と持ちかける手口で、コンサルティング契約締結を誘うケースもあった。
これまで実際の被害報告はないが「詐欺師らが組織的に情報交換しながら動いているようだ」(不動産関係者)といい、予断を許さない。
大分県の「大分厚生年金休暇センター」をめぐっては、「事前に売却金額や売却時期、売却先が決まっている」という偽情報が流れた。機構幹部は「度重なる官僚汚職や談合事件のせいで、『紹介料やわいろを払えば国有施設を安く買える』というダーティーなイメージがつきまとっている」と嘆く。