記事登録
2007年12月25日(火) 17時58分

生協、個配の時代 都市で急増、班配達抜く朝日新聞

 隣近所で班をつくり、購入した商品を分け合う「生協」のスタイルが、過去のものになりつつある。自宅まで商品を届けてくれる個別配達(個配)が都市部を中心に急成長。その販売額は年々増え、今秋まとまった06年度の実績で、ついに生協全体で班単位の配達(班配)を上回った。個配をめぐる生協同士の競争も激烈で、「生協の変質」が確実に進んでいる。

生協の個配と班配の販売額

 東京都江東区のある大規模マンション。ここでは約670戸の27%、約180戸が生協の個配を利用している。

 住民の主婦(32)は3年前の入居時、配達手数料の無料キャンペーン合戦に驚いた。ある生協がチラシで「6週間」とうたえば、別の生協は「8週間」。しばらくたつとインターホン越しに「2カ月になりました」と勧誘の声が聞こえてきた。

 「生協はどこも同じと思っていた。中身を比べて加入できました」。主婦は今、商品構成や配達日の違う二つの生協を使い分けているという。

 首都圏では、中堅生協の連合体「パルシステム」が90年にいち早く個配を事業化した。91年に約23万人だった組合員は、06年には約105万人に。その83%が個配利用者で、関東を中心に10都県に広がっている。

 商品カタログを「赤ちゃん世帯」「食べ盛りの子育て世帯」「大人中心のゆとり世帯」と分けたことが人気に火をつけた。松本克博・事業統括副本部長は「子育て世帯の主婦が支えた班配と異なり、個配は独身を含めた多様な世帯が利用層になると考えた」と話す。

 パルシステムを追うのが、関東と新潟、長野の8都県の各最大生協が手を組んだ「コープネット」。約322万人の組合員数は国内最大で、販売量の多さを生かした低価格路線が強みだ。

 個配参入は96年。利用者は全体の54%だが、首都圏を中心に広がりつつある。稲橋邦彦・共同購入事業本部長は「巨大組織ゆえに出遅れた。追いつこうと必死です」。不在でも商品が届く、買った商品を他の人に見られることがない、などが個配人気の理由という。

 2強の競争はし烈だ。パルシステムは、「せいきょう」の名を出さないテレビCMをはじめとする「ブランド戦略」を展開。対抗してコープネットも今年5月、「コープデリ」のブランド名でCMを始めた。するとパルシステムは、配達手数料を4カ月無料にするキャンペーンをぶつけた。ネット広告でも両者は、検索最大手のグーグルで掲載順を競っている。

 日本生活協同組合連合会(日本生協連)によると、個配の販売額は年10%近く成長。9月にまとまった06年度の経営統計では、ついに販売額全体の51.4%を占めて班配を上回った。一方、班加入率は年々下がり、06年度は平均40.9%。特に東京(19.9%)、神奈川(6.9%)など首都圏できわだって低い。

 そんな中、班配にこだわる生協もある。16都道県26生協の連合体「生活クラブ生協」(組合員数約27万人)はその一つ。班配向けの商品を個配より値引きしたり、班配でしか手に入らない商品をそろえたりしている。

 「生協は、組合員同士が消費者活動を学びあう場所でもある。個配加入者にこうした思いを伝えることは難しい」と、生活クラブ生協・東京の村上彰一専務理事。最近は転勤族の妻や育児中の若い母親が「友達づくりのために」と加入する例も増えている。

 とはいえ、生活クラブでも都内の個配の比率は68%に達し、新規加入者はほとんど個配希望。「このままでは生協の存在意義が失われかねない」。村上さんは危機感を募らせている。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/life/update/1225/TKY200712250198.html