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2007年12月25日(火) 11時32分

「癒やし免許」10万円 現金授受明らかに 神世界事件朝日新聞

 神奈川県警の前警備課長吉田澄雄警視(51)が関与した疑いのある有限会社「神世界(しんせかい)」グループの霊感商法事件。詐欺容疑で家宅捜索を受けた有限会社「E2(イー・スクエア)」の杉本明枝社長(44)の説明で、吉田警視と部下の警察官2人が「癒やしの免許」を取得していた実態や、警視と多額の現金を授受していたことなどが浮かび上がった。関係者の証言も合わせてたどると——。

マンション20階にある「びびっととうきょう・青山サロン」。ここで「御霊光」と呼ばれる行為をしていたという=東京都港区で

 「不思議な体験をしたの」。杉本社長は、10年来の付き合いがあった吉田警視と東京・新宿で食事中、切り出した。

 01年ごろ。山梨県の神世界施設で「御霊光」を体験した帰りだった。杉本社長は吉田警視に手をかざした。吉田警視は「すごく感じるんだけどこれ何。とても熱い」と驚いた。2人はその後、神世界を訪れたという。

 吉田警視が、「青山サロン」の部屋の名義人になったのは03年春。杉本社長の婚約者と偽った。2年半後の05年冬、吉田警視はE2の会計を手伝うように。県警の仕事を終えてから、夜11時ごろ来るようになった。

 杉本社長は、吉田警視が自らに御霊光を施すライセンスを約10万円で与え、その後さらに「神力」と呼ばれるライセンスを約50万円で与えた。吉田警視が連れてきた部下3人のうち2人も約10万〜約50万円のライセンスを取得したという。

 杉本社長は03年11月にE2を設立。それまでの活動資金として、吉田警視は金融機関から借金をして約700万円を杉本社長に貸していた。杉本社長は以降、毎月20万円ずつ吉田警視に返していると説明する。

 E2は今春、約600万円の税金の納付が難しくなり、吉田警視がそのうち約430万円を穴埋めした。吉田警視は警察学校の教え子らにうその投資話を持ちかけて金を工面したとされる。

 吉田警視は当初、「公務員だから」とタクシー代ほどしか受け取らなかったという。だが、深夜まで会計の仕事が続くようになり、杉本社長の意向で月数万円から十数万円が家族の口座に振り込まれたり、手渡しされたりした。総額は「多くても240万円ぐらい」(杉本社長)とする。

 吉田警視の一連の行動について杉本社長は「昔は恋愛感情があったが、今はそれを超えた関係。私を助けるためだったと思う」。

 エステなどの仕事をしていた杉本社長はE2設立後、一時は札幌や大阪、福岡など全国に11サロンの店舗を展開。現在は青山サロンなど6店があるという。

 神世界と契約したE2は、同じく神世界の直轄傘下という有限会社「びびっととうきょう」(東京都稲城市)と06年1月に業務委託契約を結んだ。両社の関係はさらに業務提携契約へと発展し、E2は神世界との契約を解除、「びびっと」社の傘下に入った。

 御霊光などを扱うには神世界との契約が必要とされる。御霊光を出せるライセンスや教えが書かれた「神書」などは神世界から定価の50%で仕入れ、それを客に販売。物品を除く御霊光や祈願などの30%がロイヤルティーとして神世界に振り込まれている。

 E2のサロン利用者は原則女性で、家族が通っていれば、男性でも利用できる。客には、芸能人や国会議員もいるという。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/1225/TKY200712250099.html