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2007年12月25日(火) 10時55分

テレビこの1年 危機感見られない民放朝日新聞

 「納豆」をめぐる喧騒(けんそう)で幕を開け、「会長」をめぐる騒動で締めくくられた、放送界の1年だった。

 関西テレビの「発掘!あるある大事典の捏造(ねつぞう)問題を受け、21日に成立した放送法改正案には当初、捏造番組を放送した放送局に対する新たな行政処分が盛り込まれていた。放送局側は放送倫理・番組向上機構に「放送倫理検証委員会」を作り自浄機能を強調したが、早速、TBS「朝ズバッ!」の不二家報道問題が表面化する。委員会の結論は、「番組は、もっとちゃんと作るべきだ」だった。

 10月末にあった民放連のシンポジウム。バラエティーでテロップが過剰ではないかという指摘に、日本テレビの編成局長は「電波少年」を引いて「演出のツールになっていた」とほめた。欧米に比べドラマの質が低いという声に、フジテレビの編成制作局長は「作り手の力量は上がっている」と反論し「ガリレオ」を「すばらしい」とたたえた。

 だが、成功した自局番組を例に出して自画自賛しているだけでは、視聴者がこれから見たいものを見失いはしないかと心配になる。

 かつて20%超が当たり前だった巨人戦ナイターの視聴率は今シーズンも一けた台。ゴールデンタイムの総世帯視聴率はこの20年で約6ポイント下がった。携帯電話やネットなどの影響でテレビ離れは確実に起き、BS・CSやCATVの充実で、地上波離れも始まった。銀行もつぶれ、自治体さえ破綻(はたん)する時代だが、テレビ局の倒産はいまだ例がない。

 他方、受信料に支えられてつぶれる心配のなかったNHK。相次いだ不祥事で収入が激減する危機に直面し、変化への対応が敏感になったのか、今年度上期のゴールデンタイムの総合テレビの平均視聴率は、フジテレビに次ぐ2位(関東地区、ビデオリサーチ調べ)に。「今年は参院選もあったし中高年向けの番組づくりが奏功した」(民放幹部)と分析してみせることはたやすいが、そこに危機感はあまり感じられない。

 NHKは6月に経営委員長が交代し、年明けには会長も代わる。良しあしは別にして、長く強固に屹立(きつりつ)していた“公共放送”というテレビ塔も強風に大きく揺らいでいる感じはする。

 民放も知恵を絞って、まずは同じような顔ぶれの俳優やタレントを各局が使い回す悪循環から抜けて、番組をもっとちゃんと作らないと、テレビの地盤沈下が進むだろう。やがて、視聴者に置いていかれるかもしれない。

http://www.asahi.com/culture/tv_radio/TKY200712250068.html