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2007年12月21日(金) 07時59分

吉田警視 悩む部下に接近、金引き出す 霊感商法事件 朝日新聞

 県警内では悩みを抱える部下を霊感商法に引き込み、サロンでは「警察の人がいるから安心」などの勧誘トークに使われた——。神奈川県警が詐欺容疑で強制捜査に踏み切った「神世界(しんせかい)」による霊感商法に関与した疑いが浮上している同県警の吉田澄雄警視(51)。関係者の話で、その具体的手法が明らかになった20日、被害者の弁護団が結成される一方で、県警本部長は陳謝した。

 「何か、悩みがあるんじゃないのか」。吉田澄雄警視は勤務中、部下の1人で、県警の機動隊に所属していた30代の男性警官に声をかけた。03年春のころで、吉田警視は県警の公安2課長代理に就いたばかりだった。

 男性警官は春に出した身上調書に「預金は700万円」と書いていた。一方、職場ではイジメを受けていたという。なぜ声を掛けてくれたか不思議だったが、誘われるがままに酒席に付いて行き、悩みを打ち明けた。

 「今の世の中、一番大切なのは健康。お金は2番目だ」と吉田警視に言われた。だが、親しくなるにつれ、金銭を求められるようになっていった。

 トラブルを減らすのに20万円。寮を探すのに20万円。魂を昇らせるのに70万円。特別祈願料で50万円。御礼祈願料で40万円……。

 山梨県甲斐市の「神世界」の施設や東京都内の高級マンション、年2回の集会にも誘われた。東京・渋谷のサロンでヒーリングも受けた。

 知り合ってから半年ほどで貯金は底をつき、県警の共済組合から数百万円を借りた。共済組合から借金するには上司の「承認」が必要だが、これも吉田警視がしたとされる。

 「身上書を見て近付いたり自分の承認で共済組合から借金させたり、立場を使った悪質な勧誘だ」と関係者は憤る。

 吉田警視はかつて県警察学校の教官をしていた。教え子に「義理の兄が銀行役員をやっている。いい話がある」と同期会の飲み会などで融資話を持ちかけることもあった。「1口50万円で元金保証」などと言って、4〜5人から430万円を集めていた。

 これらの金は事業資金に充てられたとみられ、関係者は「金に対してはむちゃくちゃだった」と振り返る。

 ■県警本部長「県民のみなさまに申し訳ない」

 神奈川県警が詐欺捜査の対象にしている霊感商法に、同じ県警の幹部が関与していたとされる前代未聞の不祥事について、田端智明・県警本部長が20日の定例記者会見で陳謝した。

 「警察職員が関与した疑いがあること自体、極めて遺憾。県民のみなさまに申し訳ない」

 だが、今後の捜査については「徹底した捜査をして真相解明をし、その結果をもって厳正に対処したい」と述べるにとどまった。

 吉田警視は、署の課長などを経て、91年に同期の中でも早く警部に昇任した。02年に日韓で開催されたサッカーW杯の際には、警察庁警備課に出向。県警に戻った後、公安2課長代理、国際テロ対策室長と「出世コース」を歩み、今年9月に警備課長に就任したばかりだった。 アサヒ・コムトップへ

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