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2007年12月21日(金) 11時01分

県警:警視の霊感商法関与 “超エリート”がなぜ… 本部長が謝罪 /神奈川毎日新聞

 県警警備課長だった吉田澄雄警視(51)=警備部付に異動=がヒーリングサロンを装った霊感商法に関与した不祥事で、田端智明本部長は20日「極めて遺憾。県民の皆様に申し訳ない」と謝罪した。吉田警視を知る警察官らは驚きを隠さず、ある幹部は「処理を誤れば大変なことになる」と危機感を募らせた。【野口由紀、鈴木一生、梅田麻衣子、杉埜水脈】
 ◇「厳正に対処する」
 「徹底した捜査をするよう指示した。立件すべきものがあれば、立件して厳正に対処する」
 20日の定例会見に臨んだ田端本部長は、沈痛な面持ちで語った。吉田警視の関与の度合いについては「被害者の方から告訴を受けたところ。これから究明していく」と述べるにとどまった。
 松沢成文知事も20日の県議会本会議で「事案の重大性にかんがみ、公安委員会と県警本部で一日も早く事実関係の解明と県民の信頼回復に向けた取り組みがなされるよう強く望んでいる」と述べた。
 ◆県警内も捜索
 県警は20日午後、本部の警備課長室や吉田警視が出入りしていた東京都港区内のヒーリングサロンなどの家宅捜索に入り、本格的な捜査に乗り出した。
 横浜市金沢区内の閑静な住宅街にある吉田警視の自宅前には早朝から約20人の報道陣が詰めかけたが、窓はカーテンが閉め切られたまま。午後5時25分ごろ、段ボールを持った私服姿の捜査員約10人が捜索に入ると、一斉にフラッシュがたかれた。近くの無職男性(77)は「霊感商法をやっているとはまったく知らなかった」と驚いていた。
 県警本部16階にある警備課長室には午後4時45分、捜査員数人が隣の部屋の扉を細く開け、滑り込むように中に入った。
 ◆絶句する職員
 警備部では機動隊長を経験してから所属長になるのが「常識」とされる。吉田警視はそれを経ず、51歳で警備課長に上り詰めた。旧知の県警職員は「超エリート。将来は部長と言われていた。霊感商法なんて思いも寄らなかった」と嘆いた。別の職員も「頭がよく、物腰が柔らかで警備の訓練について説明するのも上手だった。なんであの人が……」と驚いた。
 ◇不祥事再発に求められる改善策
 99年に現職警察官の覚せい剤使用を組織ぐるみで隠ぺいしたことが発覚し、警察不祥事の代名詞的存在となった神奈川県警。組織改革に取り組んできた中、またも発覚した幹部の不祥事に関係者は頭を抱える。
 昨年末〜今年1月にかけ計3人の警察官が相次いで逮捕された際、当時の井上美昭本部長は「県警は00年以降の全国警察改革の発祥地。当時の危機感が失われている」と指摘。不祥事予防の担当職員を監察官室に4人増員するなど異例の措置を取った。
 また不祥事防止塾を開講したり、盗撮などの破廉恥不祥事を原則公表するなどの対策を取ってきた。しかし不祥事はまたも繰り返され、さらなる改善策が求められている。【池田知広】
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 ◇最近の主な県警の不祥事◇
98年12月   巡査長が証拠品のネガを元に女子大生に交際を求め懲戒免職に。県警は公表せず
99年10月   警ら隊員に対する集団暴行事件で、巡査部長が銃刀法違反容疑などで逮捕される
99年12月   警部補が覚せい剤を使用した不祥事を組織ぐるみで隠ぺいしたとして当時の本部長ら5人が起訴され、23人が処分を受ける
01年 8月   暴力団員に捜査情報を漏らし現金を受け取った巡査部長が受託収賄容疑で逮捕される
03年 6月   元署長が酒に酔って署員を殴り、傷害容疑で書類送検される
04年 3月   巡査部長2人が風俗店に捜査情報を漏らし、加重収賄などの疑いで逮捕される
04年 6月   巡査が車で「ドリフト行為」をしたとして、道交法違反容疑で書類送検される
05年 6〜7月 警察官5人による盗撮行為が相次ぎ発覚
05年 7月   巡査部長らが逮捕・拘置された女性2人の釈放祝いを開き、懲戒処分
06年11月   証拠品から現金を着服したとして警部補が業務上横領容疑で逮捕される
06年12月   巡査部長が自治体から個人情報を不正入手、虚偽有印公文書作成などの疑いで逮捕される
         勤務中に女性宅に侵入、現金を盗んだ巡査長が窃盗容疑で逮捕される
07年 9月   電車内で高校生を平手打ちし、巡査長が傷害容疑で逮捕される

12月21日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071221-00000039-mailo-l14