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2007年12月13日(木) 20時00分

「クリック詐欺」巧妙化 芸能人話の偽ブログで誘導朝日新聞

 インターネットのサイト画面をクリックするだけで登録料などを請求される「クリック詐欺」の手口が巧妙化している。複数回クリックさせて閲覧者の同意を得たかのように装ったり、芸能人の情報を掲載したとうたう偽のブログから誘導したりする手法が目立つ。手口がばれては新たな手法を次々と登場させてくるネット詐欺師らの動きに、捜査当局や関係機関は警戒を強めている。

アダルトサイト上でクリックした後に表示された請求書(情報処理推進機構提供)

主なツークリック詐欺被害の流れ

 香川県に住む30歳代の女性は昨年夏、夕食のメニューを選ぶため、検索サイトで「おかず」と入力したら、「おかずちゃんねる」がヒットした。

 開いてみるとアダルトサイトで、閉じる方法がなかなか見つからず、「ENTER」のボタンをクリック。小さな文字の利用規約や「18歳以上のみ登録できます」と表示された画面で、「キャンセル」ボタンをクリックしたのに勝手に「登録」され、9万5000円の振り込みを要求する画面が表れた。

 「振り込まないと女性の裸が印刷された督促はがきを送る」との脅し文句もあり、女性は指定口座に金を振り込んだ。「夫に知られたくなかった」と話したという。

 「おかずちゃんねる」は、千葉県警が11月28日に詐欺などの疑いで逮捕した男7人らが開設したサイト。男らは同県船橋市内のビルを拠点に、昨年7月から、同様の43サイトを運営。全国の約4200人から計約3億7000万円をだましとっていたという。男らは容疑を否認している。

 情報処理推進機構によると、ツークリック詐欺が登場したのは05年夏ごろ。大阪府警が1回クリックさせるだけの「ワンクリック詐欺」集団を摘発した直後だった。

 民法の特例法は、ネットなど電子消費者契約について、契約者の意思確認をきちんとしないと契約が無効になるとしている。県警幹部は「ワンクリックでは契約は無効との判例がある。ツークリックでは確認画面が出るので、自分が間違えたという意識になりやすいのだろう」と話している。

 最近目立つのが、「アイドルの秘密教えます」などと宣伝した偽のブログからアダルトサイトに誘導する手口。関心の高い話題で引きつけ、サイトの閲覧者を増やす狙いとみられる。

 同機構には今年1〜11月、クリック詐欺の相談3060件が寄せられた。すでに昨年1年間の2162件を上回っている。ほとんどが「ツークリック詐欺」の被害相談だったという。請求額は1件10万円前後という。

 だます側は閲覧者のIPアドレスがサイト開設者に通知される仕組みを悪用。パソコンの機種、プロバイダー名などを示し、閲覧者に「登録完了」と思いこませる手法も一般的だ。契約解除のため開設者側に連絡を取り、かえって自分の氏名や住所、メールアドレスなどを知られる場合もある。個人情報を入手されたと思いこみ、アダルトサイトを閲覧した引け目から、金を支払うケースが多いとみられる。

 警察庁によると、有料サイト利用名目による架空請求の被害は今年1〜10月で1204件。機構の担当者は「クリックしただけでは氏名や住所などの個人情報が知られることはない。慌てて金を振り込まないでほしい」と注意を呼びかける。

http://www.asahi.com/national/update/1213/TKY200712130227.html