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2007年12月13日(木) 11時00分

多摩弁護士会館:本部主導で売却案 地元支部反発−−八王子 /東京毎日新聞

 ◇「サービス低下する」
 09年に予定される東京地・家裁八王子支部(八王子市)の立川移転に伴い、都内の3弁護士会本部主導で多摩弁護士会館(同市)の売却案が浮上、地元支部は「司法サービスが低下する」と反対している。八王子支部が扱う年間の裁判件数は全国の10位以内。会館には近県から相談に来る人も多い。夜間や休日の相談窓口の開設も検討する支部側は存続を求めるが、3本部は多摩の拠点は立川の賃貸ビルに置く新会館で十分との考え方だ。【酒井祥宏】
 都内には東京、第一東京、第二東京の三つの弁護士会がある。98年、地元自治体の要望に応えて3弁護士会の多摩支部が創設され、3支部共同運営の「東京三弁護士会多摩支部」(三会支部)として活動している。
 有志が寄付を募って建設した5階建て会館の扱いは、今年7月から3弁護士会の本部で協議が始まり、年内に売却方針を決める見込み。既に立川市内で新会館用の賃貸ビルを確保し、現会館にある法律相談センターの移転先は八王子駅前で探すと支部に伝えた。三会支部の試算では、現会館でセンターを継続したほうが維持管理費は安い。
 最高裁の司法統計によると、地・家裁八王子支部が02年に扱った事件は▽家事1万8690件(全国4位)▽刑事2604件(同7位)▽民事1万3692件(同10位)——と多い。しかし、東京23区との司法サービスの格差は大きい。都内の弁護士約1万1000人のうち、三会支部の会員は860人(07年9月現在)。常設の相談窓口も3本部は計10カ所以上なのに対し、多摩は八王子と立川しかない。
 八王子での相談件数は会館建設の98年度に2000件近くに増え、その後3000件を超えた。立川にセンターができた03年度以降も二千数百件で推移。JR中央線、横浜線直通の山梨、神奈川県からも相談に訪れており、三会支部は「八王子の需要は多い」と話す。
 地元の八王子市は法務局、労基署など合同庁舎の地裁支部跡地への建設について国と協議中。市政策審議室は「立地条件がよく、安心して利用できる会館を残してほしい」と要望する。
 支部会員の中村一郎弁護士は「司法サービスの需要増に逆行し、質が低下しかねない」と嘆く。休日や夜間の出入りに制限があり、さまざまな企業・団体と一緒の賃貸ビルでは、相談業務の拡充は難しく、利用者に与える安心感も違うという。別の支部会員も「実情を理解せず、利用者の視点に立っていない」と憤る。
 3本部はいずれも「検討中で公表する段階にはない」などと話している。

12月13日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071213-00000008-mailo-l13