記事登録
2007年12月08日(土) 03時00分

死刑囚の氏名公開で賛否 死刑廃止派に懸念も朝日新聞

 法務省は7日午前に執行した死刑について、初めて対象者の氏名や執行場所を公表した。執行のあり方について省内に勉強会を設けた鳩山法相の意向もあり、「秘密主義」と批判されてきた死刑執行の情報公開が一歩進んだ形だ。一方で「死刑を進める布石」にしたい法務省側の思惑に対し、死刑廃止を訴える人たちの間には懸念が募っている。

 「(公開は)私の判断です。勉強会でもスパッと結論が出ることではなかったが、決断をしようと思った」。鳩山法相はこの日午後の記者会見で強調した。

 法務省はもともと、死刑を執行した事実も公表していなかった。98年からは執行したことと、対象となった人数だけ明らかにしてきたが、氏名の公表にはかたくなな態度を崩さなかった。

 死刑囚の遺族が受ける精神的な苦痛や、他の死刑囚の心情に与える影響といった理由のほか、執行の順番などへの興味をあおったり、死刑そのものの是非についての論議が高まったりしかねない、との懸念があった。

 しかし、国民の8割が死刑制度を支持し、廃止を求める論議が下火になっていることが方針転換につながった。鳩山法相は「人数(の公表)だけではブラックボックスという感じ。法にのっとり執行していることを明らかにした方が、国民の理解を得られる」と説明した。対象者の犯罪事実を公開したことについても「どんな罪を犯した人なのかを公表すれば、死刑執行は当然という理解が広まるはず」と法務省幹部は言う。

 一方、死刑廃止議員連盟の保坂展人衆院議員は「執行の残虐性は隠して正当性だけをアピールするのは情報操作。死刑をめぐる議論が活発になってきた時に、一方的に議論の扉を閉ざす行為だ」と批判する。明治大の菊田幸一名誉教授も「国連などが求めているのは死刑囚の生活態度や心情面の公開。これでは情報公開の名を借りた法務省のアピールだ」と憤る。

 勉強会で執行のあり方を検討している最中での執行を批判する声もあるが、鳩山法相は「勉強は勉強。その間は執行しないでおけばいいとの議論があるが、世論に反することになる」と強調した。

http://www.asahi.com/national/update/1207/TKY200712070344.html