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2007年12月08日(土) 13時53分

街が奏でる快適な音 騒音減らすルール策定へ 都、来年度から環境調査東京新聞

 静寂な住宅地に響く寺院の鐘、風に揺れる古木のざわめき…。人を快適な気持ちにさせる「音」を生かした街づくりを進めるため、東京都は来年度から都内各地の「音環境」を調査する方針を固めた。地域を特徴づける快適な音を特定し、それを邪魔する騒音を減らすためのルールを検討する。都は本年度、指定地域に厳しい色彩規制を課せる「景観計画」を施行済み。これに加えて、目だけでなく耳にも快適な「五感に優しい」都市を目指す。 (浅田晃弘)

 「音環境」の考え方は環境庁(当時)が生みの親。将来に残したい音の聞こえる環境として一九九六年、「日本の音風景百選」を発表した。東京都からは、柴又帝釈天(葛飾区)、上野の鐘(台東区)、三宝寺池(練馬区)、成蹊学園のケヤキ並木(武蔵野市)−の四カ所が選ばれている。

 都は、これらに加えて「街の成り立ちや文化を踏まえ、住民が快適と感じる音」(環境局)を広く探ろうと、音環境調査を行うことにした。寺院や自然が奏でる音だけでなく、商店街での売り子の掛け声のような、街のイメージとなる音を取り上げたいという。

 調査地点は、都心から多摩地区まで都内全域から幅広く設定する。来年度は約二十カ所での調査を予定。銀座やアメ横、入谷、吉祥寺などが候補地にあがっている。調査費として来年度予算案に三千万円を計上した。

 調査完了後は、音響や都市開発の専門家らからなる委員会を組織し、音を生かした街づくりの方策を検討。数年間かけて「音環境ルール」を定め、快適な音を打ち消す騒音を低減するための制度づくりを目指す。

 現在の騒音規制でも、工場操業など発生源には用途地域別に音量制限がある。ただ、これは個別規制で、例えば新宿や渋谷の歓楽街のように、軒を連ねる複数の商店などが一斉に客寄せの声や音楽などを発すれば、一つ一つの音は基準値を下回っていても、全体では大音量となってしまう。

 このため都は、景観計画のように、音についても「地域丸ごと」規制がかけられるルール作りを想定している。

 都の担当者は「音も景観と同じで、街らしさを表現する大切な要素。地域の特性にあった音環境の在り方を、住民が話し合って決められるような方法が取れればいい」と話している。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007120890135309.html