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2007年12月06日(木) 07時20分

住基ネット訴訟 杉並区が上告へ 『選択制』認めぬのは不当東京新聞

 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)に参加していない東京都杉並区が、希望する区民だけが参加できる「選択制」を認めるよう国や都に求めた訴訟で、同区の山田宏区長は五日、一審に続き原告敗訴とした二審・東京高裁判決を不服として、最高裁に近く上告する方針を明らかにした。

 山田区長は同日の区議会委員会で「二審判決は時代に逆行する判断。将来の地方自治や国民の自由に対し、このままでは禍根を残す」と述べた。

 訴えで杉並区は、選択制による段階的な住基ネットへの参加を認めないのは不当として、参加を希望する区民の本人確認情報だけ、区が都に送信することを認めるよう求めるなどしていた。

 しかし先月二十九日の東京高裁判決は「情報送信をするか否かについて市区町村長に裁量権はない」と判断。情報流出などの安全性が確認されてない段階で不参加希望者情報を送信すると、憲法一三条で保障されたプライバシー権を侵害するおそれがあるとした区の主張に対し「区が独自に違憲性を判断し、法で定める事務処理を行わないのは許されない」とした。

■『将来の日本のため』

 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)をめぐり、段階的な参加を「選択制」として認めるよう求めている杉並区。先月二十九日の東京高裁での敗訴を受け、山田宏区長は五日の区議会の総務財政委員会と区民生活委員会の連合審査会で、最高裁の判断を仰ぐ考えを表明した。裁判の決着は来年以降に持ち越された。

 「きちっとした対応をしないと国全体がおかしくなる」。山田区長は委員会でこう切り出し、「判決は時代に逆行する」「将来の日本のため」と言葉を継ぎ、上告する理由を述べた。また「住基ネットは問題があると以前から警鐘を鳴らしてきたが、行政官として法を守る立場にもある。難しいところだが、法でどこまで認められるかを争っている」として理解を求めた。

 区は二審判決について、自治体の裁量権や住民の自己情報コントロール権が否定された部分を、特に問題視している。上告期限の十三日に向け、手続きを進める方針。

 なお議員からは「国立市や福島県矢祭町は不参加を貫いている。段階的参加という中途半端な裁判はやめるべきだ」「裁判は区長のパフォーマンスだ」と批判的な声も出た。 (原昌志)

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007120690072039.html