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2007年12月06日(木) 16時23分

リウマチ治療薬で79人死亡 05年3月以降朝日新聞

 関節リウマチの治療薬「エンブレル」(一般名エタネルセプト)の投与後に死亡し、薬との因果関係が否定できないと製造元に判断された患者が05年3月末の国内販売開始から今年11月末までの2年8カ月で79人にのぼることがわかった。製造元のワイス(東京都品川区)が明らかにした。厚生労働省は「これまでも添付文書で副作用の注意喚起をしており、引き続き慎重な投与を呼びかけていく」と話している。

 エンブレルは体の免疫反応を抑えて関節リウマチの痛みや炎症を抑える薬で、世界70カ国以上で承認されている。既存の薬が効きにくい人に投与される。炎症作用を著しく抑制する一方で、体の防御機能が弱まり死亡例を含む重い副作用も報告されている。国内では05年1月に承認されたが、厚労省は市販後の一定期間に投与した全患者を登録して有効性と安全性を調査することを企業側に義務づけた。

 ワイスは05年3月30日から武田薬品工業と共同で国内販売を開始。07年4月の登録終了までに登録された患者は1万4369人にのぼった。このうち、死亡した人は76人。年齢は60、70代が大半を占めた。

 厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第1部会の今年4月27日の審議で全例調査の登録が終了。調査に参加する医療機関だけでなく、一般の医療機関も処方できるようになった。その後に医師側の自発的な報告で副作用による死亡とされた患者が3人いた。

 死亡患者の副作用では感染症や呼吸器障害が多く見られ、間質性肺疾患が12件、肺炎が10件、敗血症7件などとなっている。

 朝日新聞の取材に対し、ワイスは「通常の人の死亡率や年齢、性別などを加味しても、投与患者の死亡率は予想の範囲内だと考えている」と話している。

 厚労省安全対策課は「死亡症例があるからといって必ずしも危険かどうかは今の段階では判断できない。医薬品はリスクがあり、今後も適切な使用を呼びかけていく」としている。

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 〈関節リウマチ〉 手足などの関節に炎症が起こり、関節の骨や軟骨を破壊する進行性の病気。女性の発症が多く、国内の患者は約60万人と推定される。ウイルスや細菌などが体内に侵入したときに免疫反応で血液中に分泌される「炎症性サイトカイン」が原因物質。炎症を起こすことで体を守る働きがあり、本来は一時的に分泌されるだけだが、分泌が制御できずに炎症が進むと自分の体をむしばみ、関節リウマチを発症する。

http://www.asahi.com/national/update/1206/TKY200712060197.html