記事登録
2007年12月04日(火) 13時12分

「イラン核開発計画中断」 米報告書「03年秋に」 朝日新聞

 イランの核兵器開発疑惑に関して、米中央情報局(CIA)など米政府の情報機関が3日、「イランは03年秋から核兵器計画を停止しているとみられる」などとした機密報告書の結論部分を公表した。ブッシュ政権が主張してきたイラン核計画の脅威の緊急性とはかけ離れた内容で、05年に米情報機関が出した同様の分析報告よりも表現が後退している。

 イラン核問題でブッシュ政権は、外交解決をめざすと繰り返しつつ、10月には大統領自身が「第3次世界大戦を防ぐにはイランの核開発を許してはならない」と発言するなど、将来の軍事作戦に含みをもたせてきた。今回、イランの核は危急の脅威ではないとの判断が示されたことで、武力行使への傾斜には当面、歯止めがかかるとみられる。国連安保理での対イラン制裁論議にも影響を及ぼしそうだ。

 報告書は米政府の各省庁にまたがる16情報機関が、外交安全保障の主要課題について総意をまとめる「国家情報評価」(NIE)として11月に作成。「高い信頼性」つきで、イランは03年秋から核開発を停止している、と結論づけた。現在も核開発の意図があるかは「不明」としつつ、07年半ばの段階で計画は再開されていない見込みは「中程度の信頼性がある」と分析した。

 一方で報告書は、原料となる核分裂物質を入手するためのウラン濃縮計画について、イランが核弾頭1個分を生産できる技術水準に達するのは「最速で09年末」としつつ「それも非常に考えにくい」と指摘。中信頼度で「10年から15年にかけて」と予測した。

 05年の報告書では、2000年代の終わりまでに核弾頭1個分に必要なだけの核分裂物質を生産する可能性がある、と警告していた。

 また、イラン政府の核開発に向けた決意は、米情報機関が05年以来推定してきた水準よりも弱い、とした。イランが核開発を遅らせた背景としては「政治、経済、軍事的コストを無視して核兵器入手を急ぐ姿勢ではなく、損得勘定に基づく決定がある」と推察した。

 ハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)はこれを受けて記者会見し「全体的に見れば我々にとってよい知らせだ。我々がイランの核開発に懸念を抱き、外交圧力を高めてきたのが正しい戦略だったことを示している」などと反論した。

http://www.asahi.com/international/update/1204/TKY200712040042.html