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2007年12月01日(土) 12時01分

即決裁判:実施1年間で65件 検察、被告双方に利点 /新潟毎日新聞

 ◇「司法取引」誘因の危惧も
 司法制度改革の一環で、原則として1日で裁判を終える「即決裁判」が県内でも増えている。県内で初めて適用された昨年11月以来、11月27日現在で65件に達した。09年導入予定の裁判員裁判に向け、検察官の負担を軽くする狙いがあり、被告にとっては身柄拘束の期間が短縮されるメリットがあるという。
 即決裁判は原則として起訴後14日以内に開かれる初公判で結審、直後に判決が言い渡される手続きのこと。検察、弁護側双方に争いがなく、執行猶予付き判決が想定される刑事事件が対象だ。
 新潟地裁で28日、薬事法違反(無許可販売)の罪に問われた笠原幸夫被告(55)の即決裁判があった。起訴状朗読、冒頭陳述に続き、笠原被告が「間違いございません」と罪を認めると、大谷吉史裁判官は即決裁判の採用を宣告。被告人質問や論告求刑を経て、約30分間で懲役2年6月、執行猶予3年の判決が言い渡された。
 導入の背景として、新潟地検の田辺哲夫次席検事は、裁判員制度発足後の業務の変化を挙げる。冒頭陳述など裁判員に分かりやすく起訴事実を伝える工夫が求められ、「裁判員裁判へ検察官の労力を傾けなければならない」との事情だ。
 被告への影響はどうか。福井泰雄弁護士(県弁護士会)は「適用されれば確実に有罪になるので疑問の声もあるが、1回の公判で済むメリットもあり、トータルでは良い制度と思う」と評価する。
 これに対し、遠藤達雄弁護士(県弁護士会)は「被告人が猶予判決を得るため、多少の事実誤認があっても捜査段階での取り調べで自白に傾くケースも起きかねない。検事が即決裁判を持ちかけることが、一種の『司法取引』になりはしないか」と危惧(きぐ)する。
 北海道大法学部の白取祐司教授(刑事訴訟法)は、「運用の仕方によっては取引的に使われる危険性もある。基本的には被告人の納得と権利保障が必要で、今後は実施調査やいくつかの法改正などで適正な運用に向けて対応していく必要がある」と語った。【畠山哲郎】

12月1日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071201-00000064-mailo-l15