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2007年12月01日(土) 16時33分

改正遺失物法、今月10日施行 忘れ物押しつけ合い?産経新聞

 ■警察、“在庫”大幅減に期待 鉄道、従来通り届ける構え 

 鉄道事業者が忘れ物の大半を警察署に渡さずに管理できる「改正遺失物法」が、今月10日に施行される。保管場所に困る警察側は“在庫”が大幅に減ることを期待しているが、関西の主な鉄道事業者は従来通り警察に届け出る構え。関西だけで年間約150万件を超える列車内や駅での忘れ物が、警察との押し付け合いになる可能性もある。

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 改正遺失物法では、拾得物の保管期間を従来の6カ月から3カ月に短縮。鉄道事業者は「特例施設占有者」と位置づけられ、貴重品などを除くと、拾得物のリストを提出するだけで警察署と同様の管理ができる。傘やマフラー、手袋など安い品物については2週間で売却などの処分も可能になる。

 関西の鉄道事業者はこれまで、駅員らが拾得物をまとめて週1〜4回程度、警察署に届け出を行い、保管期間の6カ月が過ぎると再び引き取るという業務を重ねてきた。

 このため、独自管理が可能になると負担軽減につながるとみられていたが、JR西日本と大手私鉄5社、地下鉄を運営する大阪市交通局はいずれも、改正法施行後も遺失物をすべて警察署に引き渡すことに決めた。

 理由についてJR西日本と大阪市交通局は、警察と同様に「保管しておくスペースがない」と説明。南海は「処分できるまでの2週間さえ待てない」とし、近鉄は「貴重品と安い品物の判断がつきかねる可能性があり、かえって作業が煩雑になる」としている。

 大手事業者の年間の忘れ物件数は、JR西日本約61万件▽近鉄約27万件▽大阪市営地下鉄約23万件▽阪急約17万件▽京阪約11万件▽南海約7万件▽阪神約4万件−となっており、総計は約150万件。1日当たり約4100件の忘れ物がある計算で、各社とも品目別の1位は傘という。

 従来通りの届け出を継続する代わりに、各事業者は返還率を上げる取り組みを模索している。

 JR西は今月10日から、拾得物をデータベース化している「遺失物管理システム」を管内全域に拡大。拾得日時や場所、品目、特徴などを入力しておき、持ち主から依頼があった際に、駅員らが的確に検索できるようにする。すでに京阪神などで運用しているが、検索用端末を428カ所から548カ所に増やし、返還率を現行の36%から40%に上げたいという。

 同様のシステムがある南海も主要21駅にある検索用端末を順次、拡大するほか、阪急は拾得物の特徴をこと細かに入力できるよう、来春をめどにシステムを更新。京阪は関西の大手私鉄で初めて設置した総合窓口「京阪電車お客さまセンター」に検索用端末を置き、すでに運用を始めている。

 一方、大阪府警曽根崎署はJR大阪駅と阪急梅田駅、阪神梅田駅が管内にあり、特に阪急と阪神からは沿線全域の忘れ物が届くことから、拾得物は毎年二十数万件にのぼっている。

 地下にある保管室は常に満杯といい、同署は「改正法の施行で保管に必要なスペースは半分になると期待していたが、実際にどの程度“在庫”がなくなるかは、始まってみないと分からない」と不安を漏らしている。

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【用語解説】改正遺失物法

 従来6カ月だった拾得物の保管期間が3カ月に短縮され、都道府県警は遺失物情報を集約してホームページで公表。携帯電話など個人情報を含む貴重品については、全国に手配した上で、保管期間を過ぎても所有権は拾い主に移さず、廃棄する。明治32年に制定された遺失物法は、昭和33年以来実質的な見直しが行われず、保管期間や処分のあり方が現状にそぐわないとして、昨年半世紀ぶりに改正された。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071201-00000121-san-soci