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2007年10月31日(水) 08時00分

街のタクシー“走る防犯カメラ” 犯行録画 重要証拠入手に期待産経新聞

 交通事故の発生時に自動車前方の様子を車載カメラで録画する「ドライブレコーダー」を、事故処理だけでなく犯罪捜査にも役立てようとする動きが広がっている。8月以降、警視庁府中署を皮切りに全国各地の警察署が映像の提供を受けるため、タクシー会社と協定を締結。ひったくりや自動販売機荒らしといった街頭での犯行現場に出くわした場合、その瞬間を記録してもらう計画だ。警視庁では「“走る防犯カメラ”で犯罪抑止や事件解決を図りたい」と期待を寄せている。(宝田将志)

 ドライブレコーダーは車のフロントガラス上部に取り付けた小型カメラが衝突や急ブレーキなどの衝撃を受けて自動的に作動し、内蔵する記憶媒体に前後約20秒の映像をカラーで録画する。

 交通事故では、当事者間の過失割合が問題となるケースも多いが、録画された映像で、信号機や飛び出しのタイミングなどの状況を確認することができる。6月に兵庫県尼崎市でタクシー運転手ら2人が死亡した事故では、飲酒運転のワゴン車が中央線を越えてタクシーに衝突するまでの一部始終をドライブレコーダーがとらえ、状況把握に威力を発揮した。

 タクシー業界ではこれまでに、全国約27万台のうち約5万台がドライブレコーダーを設置している。

 警察当局では、作動前の映像を10秒以上さかのぼって記録できるというドライブレコーダー特有の機能に注目。街頭犯罪の捜査に生かすため、警視庁府中署が8月、全国で初めて地元タクシー会社3社(計約300台)と協定を締結。その後、警視庁の城東署と東京水上署のほか、埼玉県警武南署、新潟県警長岡署などでも同様の取り組みが始まった。

 協定はタクシー運転手がひったくりや自動販売機荒らしといった街頭犯罪のほか、暴走族による共同危険行為などを目撃した場合、ドライブレコーダーに衝撃を与えるかボタンを押すことで意図的に作動させて録画をしてもらうという内容だ。

 平成18年中の全国の街頭犯罪の認知件数は約94万件で、前年より1割以上減少したものの、以前として高水準にある。協定に基づく画像提供はあくまで任意だが、警視庁では、「犯行後に作動させても犯行の最中を記録でき、重要な証拠を入手できる可能性がある。『遅かった』と思わず、協力してほしい」と呼び掛けている。

 東京水上署と協定を結んだ日本交通(東京都品川区)では、都内で毎日約1780台のタクシーを走らせている。全てのタクシーにドライブレコーダーが設置され、「録画するというコンセプトが広まれば、タクシー強盗の抑止効果も狙える」とタクシー会社側の利点を指摘。警察当局とタクシー会社との協力態勢は今後も広がっていくとみられる。

 警視庁幹部は「犯行を録画する機会が増えることに加え、犯罪者がタクシーの存在を意識するようになることで抑止効果が高まる。あとはきちんとした協力者の保護が必要。例えば、暴走族の共同危険行為を録画した運転手の方が仕返しをされないように、しっかりと取り締まっていきたい」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071031-00000092-san-soci