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2007年10月30日(火) 22時00分

ニチアスが耐火材偽装 01年から10万棟分 公表せず朝日新聞

 建材メーカー大手の「ニチアス」(東京都港区)が、住宅の軒裏などに使われる耐火材(01年以降の製造)の性能試験に臨む際、試験体に水を含ませたり、実際に販売するものより性能の高い材料を使ったりする偽装を施し、国土交通相の認定を受けていたことが30日、わかった。対象製品は全国の住宅など約10万棟に使われ、うち少なくとも約4万棟分は大臣認定の耐火性能基準を満たしていないという。同社は製品が使われている物件の把握を進め、交換・補修などの対応を始める。

会見で不正の経緯を説明するニチアスの川島吉一社長(手前)と奥本久治専務=30日午後5時20分、東京・霞が関の国土交通省で

 同社内では06年10月に社内の製品調査で不正が判明していたが、事実を公表しないまま出荷を続けてきた。しかし、内部告発の動きを受けて今月17日、初めて国交省に報告。30日に記者会見した。一連の不正で同社は、耐火材が使われる部分の構造別に計20件の大臣認定を取得していたが、すでに16件で基準を下回ることが判明。認定が取り消された。

 不正に認定資格を取得して出荷されていたのは、住宅の軒裏やビルの間仕切り壁用の耐火材4種類。「ケイ酸カルシウム板」という燃えにくいボード製で、軒裏用2種類が計約10万棟に使われ、間仕切り壁用2種類が約750物件に使われている。

 耐火性能基準を満たしていない約4万棟の大半は、旭化成の「ヘーベルハウス」「ヘーベルメゾン」シリーズとされる。

 耐火材は隣家などからの延焼を防ぐために建築基準法で設置が義務づけられている。加熱に対して延焼を防ぐ時間の目安が定められていて、対象製品は30分、45分、60分の3タイプ。同社試験では、60分タイプは実際には40〜45分、45分タイプは25〜30分の性能しかなかった。同社は「30分タイプは、不正はあったが自社調査では性能は満たしている」としている。

 対象製品の性能試験は、財団法人「ベターリビング」(東京都千代田区)で行われた。同社の不正は01年2月ごろから始まったという。

 試験は、軒裏などの実際の使用状況を再現した試験体を同社が持ち込んで行った。加熱炉に試験体を入れ、耐火材に炎を向けて加熱。屋根と耐火材に挟まれた空間の温度を計測し、規定時間を経た温度の上昇が基準内にとどまるか試した。

 同社は試験の際、屋根裏部分の建材をあらかじめ水槽につけて水を含ませておき、加熱による蒸発で温度上昇が抑えられるよう細工。さらに、試験対象の耐火材部分も、より耐火性能の高いものにすり替えていた。

 不正には新製品の開発などを行う技術開発チームの5人前後が関与したという。同社の川島吉一社長は記者会見で「不正のあった頃は、事業を拡大するのが目標となっていた。担当者がプレッシャーを感じたのかもしれない」と釈明した。

http://www.asahi.com/national/update/1030/TKY200710300340.html