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2007年10月30日(火) 21時40分

猿橋前社長を特別背任で告発検討、NOVA保全管理人朝日新聞

 会社更生法適用を申請した英会話学校大手のNOVA(大阪市)で、猿橋望前社長が実質支配していたグループ会社が、英会話用機材を仕入れ価格の数倍でNOVAに販売していたことが30日、明らかになった。保全管理人の東畠敏明弁護士が記者会見で明らかにした。NOVAの実質的な損害額は数十億円規模としており、猿橋氏を商法の特別背任容疑で刑事告発することを検討する。スポンサー企業については「数社と接触している」としたうえで来週中にも決める考えを示した。

 東畠弁護士によると、テレビ電話を利用した英会話「お茶の間留学」の機器販売を手がける「ギンガネット」は、猿橋氏が実質的に支配していた。

 ギンガの機器はNOVAが受講生に販売している。製造元のNECからの仕入れ価格は販売価格の数分の一で、差額のほとんどをギンガの売り上げに計上していたという。ギンガからは02年7月以降の5年間に10万台の機器がNOVA側に販売され、NOVAはギンガに82億円を支払っていた。

 猿橋氏は会社更生法適用が申請された26日前後に、同様に実質支配していた旅行会社の「NTB」株とともに、ギンガネットの全株を売却していた。東畠弁護士は、猿橋氏が実質支配するギンガについて、「(NOVAの)お金をためこむシステムだった」と説明。猿橋氏がギンガを使ってNOVAに実質的に損害を与えた疑いがあるとして、「(商法の)特別背任の疑いでの告発も検討したい」と述べた。

 「お茶の間留学」は、NOVAの主要事業のひとつ。運営システムはNOVAとNECが70億円をかけて共同開発したが、権利はギンガネットが保有している。

 スポンサー企業との交渉でも、「お茶の間留学」事業は売り物になるため、猿橋氏のギンガ株売却が交渉の障害になる恐れがある。東畠弁護士は、猿橋氏のギンガ株売却を明かしたうえでスポンサー企業との交渉を進めていると説明した。

 東畠弁護士は支援企業探しについて、「現在、数社と接触している」と明かした。26日の会見では1カ月以内としていた選定期間については、従業員や外国人講師の流出などが相次いでいることから「1カ月も持たない」とし、「少なくとも来週中には決断する」と話した。

 同弁護士によると、29日に経済産業省への支援要請にでかけた東京で1社、30日にも大阪で2社と今後の支援について協議したという。いずれもファンドなどではない事業会社で、これまでNOVA社内で交渉先として名前が挙がっていた流通大手のイオン、丸井、IT関連のヤフー、楽天とは接触しておらず、「今後も接触することはない」と述べた。

 また、大阪の一部地域など地域に区切って支援したいとの申し出も受けたことを明かしたが、「全体で支援してくれるところを優先したい」と改めて強調した。

http://www.asahi.com/national/update/1030/OSK200710300070.html?ref=rss