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2007年10月26日(金) 18時01分

松本サリン遺族の手記全文時事通信

 松本サリン事件で殺害された小林豊さんの母房枝さんの手記は次の通り。
 今年6月、松本サリン事件から13年目を迎えました。泣いて悔やんで、もがき苦しんできた歳月でした。私たち遺族にとって13年前の出来事ではなく、毎日があの日なのです。今でも早朝(事件を知らせる)電話が鳴った錯覚に目覚めることがあります。胸にくすぶり続けているのは(坂本堤弁護士一家殺害事件での)神奈川県警の初動捜査の甘さ、宗教法人として認可した東京都、上九一色村民の訴えに動かなかった関係省庁、どこか一つでも誠実な対応を取っていたなら一連の事件は起きなかったという思いです。
 首謀者松本(智津夫死刑囚)の刑が確定しているだけで、松本事件にかかわった被告は上告中ばかりで一人も確定していません。無差別に多くの命を奪いながら自分の命を惜しむなど許せません。真相も語らず死刑確定の松本。補償も、オウムからもテロと認めている国からもないに等しい現状です。長すぎる裁判、補償問題も含めて、被害者になって初めてこの国の多くの理不尽さが見えてきました。
 端本被告の刑が確定しても、息子たちは戻りません。誰が死刑になっても心に変化はないでしょう。生きていれば、それぞれ社会人として第一線で活躍している年ごろです。オウムの狂気のテロによって犠牲になった人たちのためにも、私たちのたどってきた13年の年月を考えても、犯した罪は命で償ってもらわねばなりません。いつか松本市を訪れることのできる日のためにも。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071026-00000139-jij-soci