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2007年10月26日(金) 07時29分

6500作がDVD1枚に 青空文庫、図書館に無料配布朝日新聞

 夏目漱石やコナン・ドイルなど国内外の作家ら407人の約6500作品が1枚のDVDに収められ、全国の図書館約8千館に無償で配られることになった。民間の電子図書館「青空文庫」がインターネットで提供しているデータを元に制作した。同文庫の魅力をDVDを通じてネットの外にも広め、文学作品などの著作物を社会が共有する意義を強くアピールするのが狙いという。

 同文庫はノンフィクション作家の富田倫生(みちお)氏らが97年7月に始めた。

 DVDには、漱石や芥川龍之介、太宰治などサイトで人気を誇る作品のほか紫式部、泉鏡花、坂口安吾、アンデルセンやユーゴー、魯迅なども収録予定で、さながら「世界文学全集」だ。直木三十五の「南国太平記」といった一般書店での入手が難しい作品もカバーする。今月末から配布予定。

DVDは操作がネットより簡易なため、ネットになじみの薄い人も使いやすい。

 DVDを借りた人は様々な使い方ができる。例えば、教師が授業で作品のテキストをコピーして大量に配る▽定年後の趣味で作品をキーワード検索や切り張りして分析・研究する▽好きな作品を集めたアンソロジー(選集)を自費出版する▽視覚障害者はテキストを音声に変換するソフトを使って聞く——などだ。

 全国の自治体、大学や高校などの図書館は計約1万あり、その大半が配布対象だ。利用法を記した冊子も添付する。

 日本図書館協会の常世田(とこよだ)良・理事は「図書館の仕事は、人類が培ってきた知識や情報の共有化を助けること。青空文庫と、ネットを使い慣れない人とを図書館がつなげられるなら、素晴らしいことだ」と強調する。

 DVDや冊子の制作費には、同文庫が蓄えてきた広告収入を充てた。DVDの配布には、文化審議会で検討されている著作権の保護期間の延長の動きに、ストップをかける狙いもある。

 著作権法は、著作権の保護期間を「作品誕生から作者の死後50年まで」と規定しているが、米政府や著作権団体などは「死後70年まで」に延長するように求めている。

 青空文庫は死後50年が過ぎるのを待って、作家の顔ぶれを増やしてきた。保護期間が20年間延長されれば、20年間は新たな作家を加えることが難しくなるという。

 同文庫はのべ約700人、常時40〜50人のボランティアが文章の入力、校正などを担う。1日約1万人が利用。同文庫のデータを元にした商品も、風呂で読める耐水性の本からゲーム機用ソフトまで次々に生まれている。

http://www.asahi.com/culture/update/1025/TKY200710250282.html