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2007年10月26日(金) 03時06分

<クレジット>残高情報、3兆円登録漏れ…過剰契約の温床に毎日新聞

 返済能力を超えるクレジット契約を結ぶ「過剰与信」を防ぐため、業界が自主ルールで利用する個人信用情報会社「シー・アイ・シー」(CIC、東京都新宿区)に登録された顧客のクレジット契約(個別商品分割払い)の残高総額が、実際の3分の2にとどまり、登録漏れが3兆円に上ることが分かった。実際より低い残高を基に、顧客の返済能力を超えた契約が横行している可能性がある。経済産業省の割賦販売法改正論議が大詰めを迎え、法規制を求める声が上がる中、業界の自主的な取り組みの限界が明らかになった。

 クレジット契約には、事前に決められた与信枠内でカード決済する方式と、商品購入のたびに信販会社に立て替え払いを申し込む個別商品分割払いがある。後者は社会問題化したリフォーム詐欺や高級呉服を大量に売りつける「次々販売」の温床とされる。

 CICによると、個人信用情報として登録された個別商品分割払いの利用残高総額は1月25日現在、6兆1944億円。ところが、社団法人「日本クレジット産業協会」(新宿区)の統計では、残高総額は05年末現在で9兆3382億円に上っていた。経産省は、現在も9兆円前後に上るとみており、全体の3分の1に当たる3兆円前後が登録されていないことになる。

 CICは、正確な審査の助けとなるよう、顧客の収入や資産の有無、与信額、返済回数などの情報を全件登録するよう会員会社に義務付ける。だが、与信判断で重要な利用残高の情報は、登録するかどうかを会員の判断に任せている。

 一方、CICは戸別訪問による住宅リフォーム詐欺事件を受けて昨年、購入した商品やサービスの名称も契約ごとに登録するルールを作った。同一商品の購入が連続する場合「次々販売」が疑われるため、このルールで過剰与信を防ぐ効果を狙った。だが、CICによると、商品名登録は1月25日現在、登録総数約6069万件中3000万件程度という。

 残高の登録漏れについて、CIC経営企画部は「登録しない会員がいる。契約時に登録される与信額や返済回数から残高は推測できるが、適正な与信に支障が出かねないとの批判は甘んじて受ける。法的な規制強化を巡る論議の成り行きを見守りたい」と話している。【クレジット問題取材班】

 ◇シー・アイ・シー(CIC) クレジット業界が出資し、84年設立された個人信用情報会社(会員は3月現在742業者)。クレジット契約を結ぶ顧客の収入や資産の有無、過去の契約の金額や利用残高などの情報を蓄積し、会員に提供する。割賦販売法38条は過剰与信防止で業者にCICを利用するよう定めるが、利用しなくても罰則はなく、努力規定にとどまっている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071026-00000015-mai-soci