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2007年10月24日(水) 13時47分

金大中氏事件「KCIAの犯行」、韓国政府が断定読売新聞

 【ソウル=竹腰雅彦】1973年、韓国の野党指導者だった金大中(キム・デジュン)氏(前韓国大統領)が東京都内のホテルで拉致された「金大中氏拉致事件」について、韓国政府の「過去事件の真相究明委員会」は24日、韓国情報機関の中央情報部(KCIA)(当時)が主導した組織的犯行と断定する報告書を公表した。

 韓国が同事件で政府機関の関与を認めたのは初めてで、韓国の柳明桓(ユ・ミョンファン)駐日大使は同日、木村仁外務副大臣を訪ね、報告書の内容を説明した。焦点の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(当時)の関与については可能性を指摘するにとどまった。日韓双方は過去に同事件を政治決着させている。同委は、日本国内で韓国当局による拉致事件が起きたことについて「深い遺憾の意」を表明する、とした。

 報告書によると、事件は李厚洛(イ・フラク)KCIA部長(当時)が日本駐在の要員らを動員して実行。同委は、事件にかかわった15人を含む18人への面談調査などを通じ、拉致の過程での金氏への危害行為や、KCIAによる事後の組織的隠ぺい工作を「明確に確認した」とした。

 朴大統領の関与については、直接的な証拠は発見できなかったとする一方、朴大統領が事件後、関係者を処罰せずに保護し、金鍾泌(キム・ジョンピル)首相(当時)を訪日させて問題収拾を図ったことなどから、「直接指示した可能性と最小限の暗黙の承認はあった」と指摘した。

 拉致が殺害目的だったかどうかについては、計画段階で殺害が検討された可能性は排除できないとしたが、実行時点では単純な拉致計画に変更されたとの判断を示した。また、当初、日本の暴力団に犯行を依頼する案が計画されたとの証言があったとした。核心人物の李厚洛氏については健康悪化で直接聴取が行えず、事件の確認作業には限界があったものとみられる。

 事件後、日本側は拉致現場で指紋が検出された韓国大使館の金東雲(キム・ドンウン)・1等書記官(当時)が事件に関与したとみて出頭を求めたが、韓国側は拒否。日韓関係は一時緊張したが、73年11月に金鍾泌首相が朴大統領の親書を携えて田中首相(当時)に陳謝したことで政治決着を図り、75年7月に金書記官を不起訴処分とする韓国の捜査結果を日本が受け入れた。この点について報告書は、「両国政府には、事件の真相隠ぺいに関与した過ちがある」と指摘した。また、金大中氏に対する韓国政府の公式謝罪の必要性を提言した。

 「真相究明委」は、盧武鉉政権が04年11月、歴代政権の公権力による不法行為の真相解明を目的に設置。KCIAの後身の国家情報院と識者で構成され、委員長は韓国の与党系新党「大統合民主新党」代表を務める民間人の呉忠一氏。1987年11月の大韓航空機爆破事件など七つの事案を調査した。「金大中氏拉致事件」の調査は昨年夏にほぼ終了したが、日韓の外交摩擦の懸念などから、公表が先送りされていた。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071024it04.htm