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2007年10月23日(火) 14時21分

<原爆訴訟控訴審>原告、国側が応酬 東京高裁で口頭弁論毎日新聞

 東京都などに在住の被爆者30人(うち12人死亡)が国を相手に、原爆症認定申請を却下した処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が23日、東京高裁(稲田龍樹裁判長)で開かれた。原告側は国の認定基準は実態に即していないと主張して全員の原爆症認定を求め、国側は基準の合理性を強調した。

 山本英典・原告団長は「原告は健康不安と偏見に悩み裁判をしている。自分の家族や友人が苦しんで死んでいったのは、原爆のせいだということを国に認めてもらうのが願い」と意見陳述。高見沢昭治弁護士は「国が基準見直しを進める一方、控訴審で争うのは行政官僚の無駄な抵抗」と批判した。

 国側は「放射線量を客観的に評価し原因確率に基づいて判断する現行の基準は、合理的で最善の方法。1審判決は科学的知見を誤解している」と反論した。

 3月の1審・東京地裁判決は「科学的根拠をあまり厳密に求めるのは、被爆者救済という法の趣旨に合わない」と指摘し30人中21人を原爆症と認定。賠償請求は棄却し、原告と国の双方が控訴した。全国17地裁で起こされた同種訴訟は国が6連敗中。

 原爆症の認定基準を巡っては、自民党の小委員会が8月、現行方式を廃止し、爆心地からの距離と特有の症状だけで原則認定するよう提言をまとめた。9月には厚生労働省の検討会が、年内の提言とりまとめに向け見直し作業を始めている。

 一方、新たに被爆者6人が23日、原爆症認定を求めて東京地裁に第3次提訴した。第2次と合わせ同地裁で係争中の原告は52人。【北村和巳】

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