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2007年10月23日(火) 10時01分

着物販売 健勝苑など提訴 愛知、千葉、秋田の女性6人毎日新聞

 大量の着物をクレジット契約で強引に売りつけられたとして、愛知県などに住む高齢女性ら6人が22日、呉服販売「健勝苑」(京都市中京区)の関連会社3社と信販会社「クオーク」(東京都港区)、「オリエントコーポレーション」(千代田区)を相手取り、信販会社に支払った代金(既払い金)計約1816万円の返還と残る債務計約806万円の帳消しを求め、名古屋地裁などに提訴した。代理人の弁護士は、他に多数の被害者がいるとみてさらに訴訟を起こす構えで、クレジット被害防止を目指して経済産業省が進める割賦販売法や特定商取引法の改正論議に影響を与えそうだ。
 訴えたのは、愛知、千葉、秋田県在住の60〜70代の女性6人。いずれも年金やパートで暮らしている。訴えによると6人は01〜05年、健勝苑と関連会社がホテルやイベント会場などで開催した展示販売で次々と着物を購入させられ、総額は約2622万円に上った。着物を購入し「健勝苑友の会」に入会した客は「メイト」と呼ばれる。次回の展示会には交通費を支給して知人を誘わせ、知人やメイトが新たに商品を買うと、購入代金の約5%が還元される仕組みになっている。
 愛知県に住むパートの女性(66)は05年12月までの4年半で、高級和服だけで50点以上を買わされ、計約1500万円のクレジット契約を結ばされた。きっかけは01年ごろ、近所の知人に「何も買わなくていいから」と誘われた展示会。社員4〜5人に「似合いますよ」「頭金も保証人もいらない」と2時間以上取り囲まれ、断り切れず、会場に待機していた信販会社社員の指示で申込書の収入欄に「年金」と書き、審査をパスした。
 その後もメイトとして展示会に行き、還元される分を支払いに回す悪循環に陥った。支払いは多い時で月30万円。購入した宝飾品を5分の1の値で売り、支払いに回すことも。自分と同様、展示会に誘った知人も多額の契約を結ばされたという。
 約30年前に夫と死別。子供3人を育て、現在はアパートに1人暮らしで、年金と清掃のパートで月収約12万円。「支払いのためにパートに追われ、貯金も失った。着物を着る暇などない。買って袖を通したのは『展示会に着て来い』と言われた3度だけ」と振り返る。約1500万円のうち約1100万円を支払い首が回らなくなり長女に相談、ようやく被害が発覚した。「自分が情けなくて」。死にたいと思ったこともあるという。
 代理人の榊原真実弁護士は「健勝苑の商法を熟知し、収入の低い女性と過剰なクレジット契約を結んだ信販2社の責任も重い」と指摘する。
 健勝苑は1927年愛媛県今治市で創業。戦後法人化されて京都に本拠を移した。民間信用調査会社によると今年5月期の売上高は56億3000万円、純利益は4億1000万円。今回の提訴について「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。【井上英介】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071023-00000002-maip-soci